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ビラスボアス解任は効を奏したか?
トッテナムの熱血後任監督が苦戦中。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byGetty Images

posted2014/03/20 10:40

ビラスボアス解任は効を奏したか?トッテナムの熱血後任監督が苦戦中。<Number Web> photograph by Getty Images

選手時代、ブラックバーンで1994-1995シーズンにプレミア制覇を果たしているシャーウッド監督。

ポゼッションは59%、しかし決定機は相手のミスから。

 無様な敗戦ではなかった。北ロンドンダービーをテレビ解説していたポール・マーソンは、元アーセナルMFだからこその厳しさかもしれないが、「守勢一方。ラッキーだった」と古巣アーセナルの勝利を評している。

 たしかに、優劣を計る1つの材料であるポゼッションは、トッテナムの59%対アーセナルの41%。アーセナルのボール支配率は今季最低に留まった。しかし、決定的なチャンスを振り返れば、ペア・メルテザッカーのヘディングをユーゴ・ロリスが至近距離でセーブした、アーセナルの得点機が真っ先に思い浮かぶ。

 一方、ナセル・シャドリのシュートがゴールライン間際でローラン・コシェルニーにブロックされたトッテナム最大のチャンスは、ボイチェフ・シュチェスニの落球から生まれたもらい物だ。

 ちなみにハイボールがアーセナル守備陣を脅かしたのは、GKの個人ミスが絡んだこの一場面のみ。トッテナムが繰り出すクロスは、長身CBのメルテザッカーを中心とするアーセナル守備陣にことごとく跳ね返された。敢えてクロスを多用するのであれば、80分過ぎまでベンチにいたセンターFWのロベルト・ソルダードを、アデバヨールと並ぶターゲットとして、より早めに前線に加えるという手もあったはずだ。

エリクセンの創造性を生かす選択肢はなかったか。

 そもそも、トッテナムはクロスに頼るべきではなかったのではないだろうか。クリスティアン・エリクセンを活かせば、違った攻め方も可能だった。先発したポジションは、2列目とはいえ左アウトサイド。

 相手に強靭なボランチがいるのであれば、プレミア1年目で、おまけに故障明けのプレーメーカーが中央で執拗にマークされる状態を避けるサイドでの起用にも頷ける。だがアーセナルの中央にいたのは、フィジカル能力の低いミケル・アルテタと、ウィンガーからコンバート中のチェンバレンだった。そして両名の背後は、機動力に欠けるメルテザッカーと、簡単に身を投げる癖のあるコシェルニー。足下での揺さぶりに弱いCBコンビだ。エリクセンに本来のトップ下を持ち場として与えるメリットは十分にあったのではないか?

【次ページ】 エモーショナルな監督の限界は今季なのか。

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