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フィギュアペアは人気種目になるか。
高橋・木原組が背負う競技の“将来”。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph bySunao Noto/JMPA
posted2014/03/16 10:40
ソチ五輪の団体戦に日本が出場できたのは、ペアで自分たちの仕事を成し遂げた高橋・木原組のおかげでもあった。シングルが圧倒的な人気を誇る日本フィギュア界の中で、彼らは存在感を増していくことができるか。
3月26日に開幕するフィギュアスケートの世界選手権。
ペアに出場する高橋成美・木原龍一にとって、それは貴重な、そして先へとつながる舞台でもある。
2人がコンビを結成することが明らかになったのは昨年1月と、まだできて間もないペアだ。もともと高橋はカナダのマーヴィン・トランとのコンビで国際大会で活躍しており、2012年の世界選手権では銅メダルを獲得している。
だが、オリンピックでは国籍が問われる。出場するにはトランが日本国籍となる必要があった。帰化問題がクローズアップされた中、一昨年コンビを解消した。日本唯一のペアだったため、この時点でペアの選手はいなくなってしまった。
しかし高橋は、ソチ五輪の団体戦に出場したい気持ちが強かった。そして、以前ペアの体験会で好印象を抱いていた木原に打診し、木原がペアへの転向を決意したことで、両者はコンビを組むことになったのだ。
ソチで成果を出し、そしてさらなる向上心を見せた。
それから1年の間に2人はいくつかの大会を経て、オリンピックへと出場した。
決して容易な道ではなかった。シングルとペアでは求められるものが大きく異なるため、木原には悩みも少なからずあり、手探りのような状態の時期もあった。
高橋にとってもまた今までと違う相手である。どのように息を合わせていくか、どうコンビネーションを磨いていくか。困難と言ってもいい状況の中を進んできた2人。その先にあったオリンピックだった。
オリンピックではまず、団体戦のショート、フリーに出場。ショートでは出場した10のペアの中で8位と健闘する。
冒頭のトリプルサルコウを着氷すると、続くダブルツイストリフトをきれいに決める。その後ややミスもあったが、ステップシークエンスからコンビネーションスピンを見せると、拍手の中で演技を終えた。
「こうした大舞台で自分たちの滑りができてよかったです」
高橋が笑顔を見せれば、木原もこう語った。
「1年前に結成したことを考えると、正直、ここまで来られたのはよかったです」
その後、上位5カ国のみが進める団体戦のフリーを滑ると、個人戦に出場。ショートでは18位となり、16位までが進めるフリーには出られなかったが、団体戦のショートの46.56点から48.45点と得点を伸ばしたのは、大会での着実な成果であった。
「次のオリンピックでは、上を狙いたいです」
木原のコメントである。オリンピックという場を経て、さらに先を目指していこう、上を、という意欲が表れていた。