濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
Doスポーツとしての格闘技の可能性。
再メジャー化へ向けた“百年構想”。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2014/03/14 10:40
記念撮影ではパラエストラ代表の中井祐樹やリバーサルジム新宿Me,Weの山崎剛などの姿もあり、格闘技界の横のつながりを感じさせた。
最年長は56歳。サラリーマンやバンドのヴォーカルも……。
ビギナー部門の最年長エントリーは56歳。サラリーマンがいて、ロックバンドのヴォーカルもいる。彼らはこの大会で“プロへの第一歩”を踏み出したというわけではない。マラソンの世界で言えば市民ランナー。フルマラソンの順位を競い合うのではなく、ハーフや10kmで自己ベストを狙う感覚で試合に出ているのだろう。ある参加者は初めての試合でビギナー部門ベスト4に入賞。「俺、意外とやれるんですね」と目を輝かせていた。
Doスポーツとしての格闘技の可能性を、大沢はこんなふうに語っている。
「今後は、できればキッズや親子向けの体験教室もやってみたいですね。格闘技がブームでもそうじゃなくても“強さ”に憧れる感情は絶対になくならないと思うんですよ。男の子は特にね。そういう子どもたちに、格闘技に接する機会を増やして、種火をまいていきたい」
格闘技を“誰でもできるスポーツ”へ。
スポーツを始めるきっかけは“テレビでスター選手の活躍を見たから”だけではないはずだ。“近所にジムがあったから”でも“同級生が習っていて楽しそうだったから”でもいい。
ビジネス的観点からすれば、さいたまスーパーアリーナで行なわれるプロ興行のチケット代も、ジムの月会費も“格闘技業界に入るお金”という意味では同じこと。グローブやテーピング、プロテインに使われる金額まで含めて、格闘技の“市場規模”だ。『D-NET』は、テレビ中継や会場の規模にとらわれない“格闘技のメジャー化”を目指している。
「スポンサーのお金で興行やって、それがテレビで放送されて、というのもいいですが、それは“他力”の盛り上がりですよね。業界外の要因で崩れてしまう可能性がある。その怖さを、PRIDEに出ていた自分はよく知ってるんです。自分たちが目指すのは、簡単には崩れない業界を“自力”で作ること。そのために必要なのがジムと会員さんの盛り上がりだと思います。格闘技を、ゴルフやボーリングのような“誰でもできるスポーツ”にしたい」(長南)
長南の究極の夢は「いつか日本に総合格闘技の大きな学校ができて、その校庭に自分の銅像が建っていること」だという。「まあ、100年後くらいにね」と笑った長南だが、重要なのは来年や再来年の目標だけではなく“100年かけて実現したい夢”があることではないか。
Jリーグにならって言えば“百年構想”。『D-NET』は、あらゆる世代が気軽に、充実した環境でスポーツを楽しむ世の中を実現するための、格闘技界からのアプローチだとも言える。