フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
ソトニコワの金は妥当な判定か?
ホームアドバンテージの限界を検証。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2014/02/25 10:50
フリーの演技翌日の記者会見。ソトニコワは表彰台に上がれなかった浅田に対して「すごく尊敬している。彼女は本当に強くて、私にとって模範の選手なんです」と最大限の賛辞を送った。
羽生に五輪金への道筋をつけた福岡GPファイナル。
最近の例では、12月に福岡で開催されたGPファイナルの男子フリーで、4回転サルコウで転倒があったにも関わらず羽生結弦に本人もびっくりするほどの高い点が与えられた。羽生に敗れて2位に終わったチャンは、こう語った。
「あの大会のショックから、今でも立ち直りきっていない。SPはともかく、フリーで自分はすごくいい演技をしたと思った。それでもジャッジに評価してもらえなかったことは、自分の中で、今でもわだかまりとなって残っている」
羽生に自信と勢いを与えるという意味においても、あのGPファイナルが日本で開催されたことは、この五輪に向けての大きなアドバンテージだった。
どこまでが許容範囲なのか?
だがこの「ホームアドバンテージ」が、許容範囲を超えた、トゥーマッチではないかと思われる結果が出たときに、疑問の声が上がる。
2001年バンクーバー世界選手権ペアで、2アクセルをパンクさせたカナダのペア、サレ&ペレティエが、完ぺきな演技をしたロシアのベレジナヤ&シナルリゼを上回って優勝した。当時はまだ6点満点方式で、与えられた技術点、芸術点の二つの数字にどのような意味があるのか、なぜカナダが上だと判定されたのか誰もわからない。
狂喜乱舞するカナダの記者たちを横目に、私たち海外のプレス関係者の間では醒めた空気が流れたことを鮮明に覚えている。だが当時はまだ世界選手権でロシアの記者の姿はほとんど見当たらず、判定疑惑はロシア国内で小さなニュースとなって流れただけだった。
異常に高かったソトニコワの5コンポーネンツ。
それでは今回のソトニコワの優勝は、「ホームアドバンテージ」の許容範囲を超えた採点だったのだろうか。
「順位は、このままでいいと思います。ただ6ポイントもの点差がついたことは、納得がいかない」そう説明するのは、前述のペイゼラである。
ソトニコワの、表現などを評価する5コンポーネンツが高すぎるというのだ。
1月に行われた欧州選手権で銀メダルを手にしたとき、ソトニコワのフリー演技の5コンポーネンツは69.60で9点台を出した項目は一つもなかった。だがソチでは5項目中4項目で9点台を取り、74.41と5ポイント近くも上がっている。キムの74.50とほとんど点差がない。
「たった一か月でアドリナのスケート技術や表現力が、急激に上達したのか。ベテランのヨナとほとんど差がないほどの表現力が身についたというのは不思議です」とペイゼラ。そしてあれほどの演技をした浅田真央のフリーよりも、点が高いことにも納得がいかない、と主張する。
「マオは3アクセルを含む8回の3回転ジャンプを跳び、心を打つような素晴らしい演技だった。本来ならフリーは1位で良かったと思う。団体戦とSPで失敗が重なっていなければ、フリーの点はもっと伸びただろうと思います」