フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
ソトニコワの金は妥当な判定か?
ホームアドバンテージの限界を検証。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2014/02/25 10:50
フリーの演技翌日の記者会見。ソトニコワは表彰台に上がれなかった浅田に対して「すごく尊敬している。彼女は本当に強くて、私にとって模範の選手なんです」と最大限の賛辞を送った。
女子シングルで、ロシアのアデリナ・ソトニコワが金メダルをとったことが果たして妥当な判定だったのか、世界各地で疑問の声が報道されている。
ノーミスで滑りきったキム・ヨナが銀メダルに終わったことで、韓国側からはISUに採点見直しの要請がなされたが、一蹴された。判定への抗議の署名運動には、20万人近くの署名が集まったという。
「ホームアドバンテージ」とは?
五輪という大舞台だからこそ、どんな些細な疑惑もニュースになる。だがこのスポーツにおいて、地元選手に高目の点が出るホームアドバンテージというものがあるのは暗黙の了解と言っても過言ではない。それは何も今に始まったことではないのである。
「ホームアドバンテージの理由は、いくつかあります」
そう語るのは、ソチには観戦に来ていた米国出身の某ジャッジ。
「まず地元の観客の応援に押されて選手が良い演技をする、ということももちろんある。またジャッジも人間ですから、会場の雰囲気にある程度影響されます。盛り上がると、つい気前よく点を出すこともあるでしょう。そして滞在して世話になっているホスト国に対して、できるだけ好意的に採点してあげよう、という心理だってあると思う」
だがそれは、勝つ資格のない選手を無理やり押し上げることではない、と彼は強調する。
「基本条件は、選手が良い演技をすること。ここでも団体競技ではリプニツカヤがノーミスで滑って高い点を出しましたが、個人戦ではミスをして、その分きっちり減点されています。選手がやるべきことをやらなければ、ホームアドバンテージもつけようがないんです」
自国開催は選手にとってのチャンス。
「ホームアドバンテージというのは、昔からありました」
そう言うのは、2002年ソルトレイクシティ五輪アイスダンスチャンピオン、フランス出身のグエンデル・ペイゼラだ。彼らがカナダのボーン&クラーツと3位争いをしていた1996年、パリで開催された初回のGPファイナルでは彼らが3位に入り、1カ月後にカナダのエドモントンで開催された世界選手権ではボーン&クラーツが3位に入った。
2000年に彼らがようやく世界タイトルを手にしたのはニース開催の大会。日本の選手の場合でも、佐野稔が3位となって日本男子初のメダルを獲得したのが1977年の東京世界選手権、佐藤有香が世界チャンピオンになれたのは1994年の幕張世界選手権だった。
メダルを取るか取らないかという瀬戸際にいる選手にとって、自国開催の大会こそが最大限のチャンス。だからこそ世界選手権など主要な大会は、各国が競い合うようにして開催地候補に名乗り出るのだ。だがそのチャンスをものにできるかどうかは、選手がどこまでの演技をするかにかかっている。