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ソトニコワの金は妥当な判定か?
ホームアドバンテージの限界を検証。 

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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photograph byAsami Enomoto/JMPA

posted2014/02/25 10:50

ソトニコワの金は妥当な判定か?ホームアドバンテージの限界を検証。<Number Web> photograph by Asami Enomoto/JMPA

フリーの演技翌日の記者会見。ソトニコワは表彰台に上がれなかった浅田に対して「すごく尊敬している。彼女は本当に強くて、私にとって模範の選手なんです」と最大限の賛辞を送った。

専門家の間でも分かれる意見。

 一方、リレハンメルと長野五輪の男子銀メダリスト、カナダのエルビス・ストイコはこう語った。

「ソトニコワの5コンポーネンツが5ポイント低かったとしても、やはり彼女が優勝していたと思う。彼女は後半にコンビネーションジャンプを2個入れている。ロシアは勝つための準備をがっちりしてきたのです。点差はちょうど、ヨナが跳ばなかった3ループのポイント分くらいです」

 ソトニコワは5種類の3回転ジャンプを合計7回跳んだ一方、キムは4種類の3回転ジャンプを合計6回しか跳んでいない。それを補うほどの表現力が、あの日のキムのプログラムにあったかどうかというのは、個人的な意見によるだろう。だがこの五輪が韓国で開催されていたら、優勝していたのはキムだったかもしれない。

点が低すぎたのはコストナーという声も。

 5コンポーネンツが勝負の決め手になるのなら、点が低すぎたのはコストナーだろうという声も多く聞かれた。1992年からフィギュアスケートを取材をしているレキップ紙のベテラン記者は、「ソトニコワとコストナーでは、スケート技術も音楽表現技術も、天と地の差がある。それでなぜ5コンポーネンツがコストナーのほうが低いのか」と疑問を口にする。

 コストナーも5種類の3回転を7回成功させた。だがルッツとフリップというもっとも難易度の高いジャンプは、それぞれ1回のみで技術点は他の2人より低い。だが確かに、あのスケーティング技術と音楽表現力は他の二人が持っていないものだ。

主観が入るのは避けられないのが採点競技。

 ノーミスの選手が金、1回転んで銀、2回転んだら銅、というように分かりやすい結果にならないのがフィギュアスケートというスポーツの難しさだ。

 同じ3回転でも跳んだ種類と質の高さ、後半の10%ボーナスがついたかどうかによってその数値は変わる。また5コンポーネンツも、それぞれ違った良さを持った選手を並べて、優劣をつけなくてはならない。ジャッジ個人の好みも大きく影響する。フィギュアスケートが主観的スポーツと言われる所以だ。

 あの夜のソトニコワは、よくプレッシャーに耐えて最後まで攻めの姿勢で思い切りよく滑りきった。キム・ヨナはベテランらしく安定感のある演技で、落ち着いた端正な滑りだった。コストナーは長い四肢を生かした大きな滑りで、音楽表現では抜き出ていた。

 個人的に言えば、トップ3人の中で誰が金を取っても良い演技を見せたと思う。私から見た今回のホームアドバンテージは、採点スポーツの許容範囲内であった。

 3月には埼玉で世界選手権が開催される。今度は日本の選手に、思い切りホームアドバンテージを味方につけて、伸び伸びと滑って欲しいと願う。

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