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松山英樹の左手故障は能力の証!?
パワー、バネ、安定感がアダになる。 

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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photograph byGetty Images

posted2014/01/17 16:30

松山英樹の左手故障は能力の証!?パワー、バネ、安定感がアダになる。<Number Web> photograph by Getty Images

ソニーオープンのプロアマ戦での松山英樹。左手親指付け根には複数枚のテーピングがなされ、怪我のコントロールが簡単でないことを想像させる。

体にバネがあり、パワーがある選手こそが危ない。

 なぜならば同箇所の故障は、松山に限ったことでは無いからだ。2013年は、若手では川村昌弘、諸藤将次らが痛みを訴えた。そして過去を遡れば、伊澤利光、丸山茂樹、田中秀道ら米ツアーを戦った日本人選手も同じケガを負っている。

「彼らに共通しているのは、体にバネがあって、パワーがあること」と成瀬氏。

 関節炎発症の原因は、スイング中のタイミングに通常時とのズレが生まれていることが大きい。「スイング中の“切り返し”が普段よりも早く、“タメ”が無くなっていることが問題」だという。

 切り返しとは、振り上げたクラブを振り下ろす動作を指す。タメは、その際の瞬間的な力を込める時間といえる。

 タメの無いバックスイングは、矢を射る前に、十分に弓を引かないようなものだ。

 だがゴルファーは、そのまま勢いが出ない矢を射ようとはしない。タメが作れなかった時は、打つ直前になんとかして体の動きを加速させたり、余計に力を加えたりすることで、ボールを普段通りに運ぼうとする。その0.1秒以内の超瞬間的な対応能力はトッププロであれば余計に優れていて、傍から見れば、タイミングが狂っているわけでもなく、結果的なミスショットも少ない。

 しかしその無理な動きの代償は、肉体に蓄積されていく。左手親指の付け根付近は、力を無理矢理クラブに伝えようとしやすい箇所なのである。

スイングがズレないからこそ、タイミングのズレが怖い。

 もうひとつ成瀬氏が着目したのが、松山には歩いている時に右ひざが内側を向く、つまり右足が内股になりやすい癖だった。

 ゴルフや野球の場合、右打者はボールを体の左側に飛ばしていく。

 だがこの場合、右ひざが内側、つまり飛球線方向に入る傾向が強ければ、体の重心は右側に乗り切らず、タメの無いバックスイングになりやすい。

「最近は治ってきましたが、それが最初に腰を痛めた原因でもあると思います。彼は特にスイング中の(回転)軸がブレない選手。だから余計に、無駄な力を逃がす場所が無い」

 シーズンを戦いながら生まれるわずかなタイミングのズレは、誰にでも起こる。だが松山の並外れたパワーと、安定感のある体の動きが不運にも災いしたともいえる。

【次ページ】 今は自分を見つめなおす時期。松山にはそれができる。

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