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松山英樹の左手故障は能力の証!?
パワー、バネ、安定感がアダになる。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byGetty Images
posted2014/01/17 16:30
ソニーオープンのプロアマ戦での松山英樹。左手親指付け根には複数枚のテーピングがなされ、怪我のコントロールが簡単でないことを想像させる。
まさか、と言うべきか。やっぱり、と言うべきか。
松山英樹の戦列復帰が、今や遅しと待たれている。
2014年の初戦として注目を集めていた1月初旬の米ツアー、ソニーオープン。松山は年明け早々にハワイ入りし、現地で調整を続けていたが、開催コースに姿を見せたのは開幕前日だけ。その日のプロアマ戦で18ホールをプレーした後、急遽出場を取りやめた。
昨年12月、カシオワールドオープンで賞金王のタイトルを決めたのを最後に、松山は試合から遠ざかっている。
同時期に痛めた左手親指の付け根付近の関節炎。その影響が、いまも色濃く残っているからだ。
米ツアーのシード権獲得に力を注いでいた夏場に痛めた腰や、秋の深刻な体調不良に比べれば、今回のケガは一見小さなものに思える。だがこの負傷からのカムバックは、一筋縄ではいかないようなのだ。
トッププレーヤーの“駆け込み寺”の見解は。
日本男子ツアーの会場には毎試合、選手がウォーミングアップやトレーニングを行うための巨大な移動車両がある。このバンの中には有酸素運動用のバイクや、マッサージ台などが完備されていて、出場選手は無料でこれらを使用できるシステムだ。
このトレーニング施設の責任者で、ツアーのオフィシャルトレーニングチーフトレーナーを務める成瀬克弘氏は、20年以上も数多くのトッププレーヤーの体と向き合ってきた。
ツアー開催中はもちろんだが、このオフの間も片山晋呉らにトレーニングメニューを提案したりと忙しい毎日を送っている。昨年初旬には、腰痛を抱えていた石川遼に請われて日本ツアー開幕前に米国へ飛び、終盤には一時帰国していた今田竜二のスイング調整にも尽力した。
シーズン中は専属トレーナーを帯同させながらも、年に何度か同氏のチェックを受ける、という選手は後を絶たず、まさに“駆け込み寺”の住職のような存在である。
さてその成瀬氏の見解によれば、今回の松山の故障の原因を「疲労の蓄積」だけに求めるのは危険らしい。