スポーツ百珍BACK NUMBER
最後の国立を制した富山第一高校。
“寮を作らない”地元選手の育成法。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2014/01/14 12:00
優勝旗を手にはにかむ大塚翔と、それを見つめる大塚一朗監督。地域密着型で成し遂げた優勝は、高校サッカーを変えるのだろうか。
1月13日、高校サッカーの聖地・国立霞ヶ丘競技場。
詰めかけた48295人の歓声と悲鳴は、時間を経るごとにヒートアップした。
富山第一(富山)vs.星稜(石川)の決勝戦は、どちらが勝利しても、昨年度の鵬翔(宮崎)に続いて県勢初優勝となる一戦だった。
序盤は前線からのハイプレスを仕掛けた富山第一がペースを握ったものの、カウンターで数少ないチャンスを生かした星稜が70分までに2点のリードを奪う展開となり、試合を締めにかかる。
「前から奪うショートカウンターで点を取って、その勢いのまま点差をつける」
試合前にそうプランを描いていた富山第一の大塚一朗監督にとっては意図せぬ試合展開となったが、試合の流れを自らの手で引き戻そうとした。
「0-2になった時点で(トップ下だった)大塚翔を1トップに、(1トップだった)渡辺仁史朗と途中出場の高浪奨をシャドーに置く“クリスマスツリー”の形にして、裏に飛び出して活路を見いだそうとしました。そしてスリーボランチの左サイドにシュート力のある村井和樹を置いた」(大塚監督)というフォーメーションで、ここまで大会無失点の星稜の堅牢な守備陣をこじ開けようとした。
残り3分から同点、そして延長での劇的なゴール。
すると87分に高浪の胸トラップからのゴールで1点差に詰め寄ると、後半アディショナルタイムにはPKを獲得し、主将の大塚が決めて2-2の同点に追いつく。
10分ハーフで行われた延長戦も、97分に星稜の藤田峻作が放ったロングシュートがクロスバーを直撃するなど息をのむ展開に。そして終了間際の109分、ロングスローのこぼれ球を途中出場の村井がハーフボレーでゴールネットに突き刺して富山第一が決勝点を手にする。110分に及んだ熱戦、そして改装前最後の国立決戦に終止符を打った。
その激闘の余韻が残るインタビュールームに姿を現した大塚監督。
「こんな感動的なフィナーレがあるのか? と思うほど感動しましたし、感無量です」
と嬉しさを噛みしめつつも、自身が貫いた育成方法について言及し始めた。