プレミアリーグの時間BACK NUMBER
攻撃・積極・若手でエバートンが再生。
前任モイーズ越えに挑むマルティネス。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2013/12/03 10:30
11月23日に行なわれた12節マージーサイド・ダービーで、戦況を見つめるマルティネス監督(手前)とリバプールのロジャーズ監督。
「エバートンにはもったいない」――。
これは、今年6月にロベルト・マルティネス監督を引き抜かれた、ウィガンのデイビッド・ウィーラン会長の発言だ。
エバートン・サポーターの中には、カチンときた者も少なくなかっただろう。
昨季で降格したウィガンは、残留争いの常連だった。それに引き換えエバートンは、 リーグ優勝には1987年以来縁がないが、マンチェスター・ユナイテッドに引き抜かれたデイビッド・モイーズ監督の下で、近年はトップ6争いの常連にまで復活を遂げた古豪なのだ。
「ウチはフルアムとは違う」
と3年前に不満の声を上げていたのは、中位留りのクラブであるフルアムからロイ・ホジソンを監督として迎えることなった、リバプールのサポーターたちだった。
そのリバプールと上位を争うライバル、エバートンのファンとしては「ウチはウィガンとは違う」とでも叫びたかったに違いない。
悲願、リバプールに対するコンプレックス解消なるか。
しかし、今季開幕から3カ月半が過ぎた今、マルティネスが「ウィガンにはもったいない」監督だったことは誰の目にも明らかだ。「エバートンに相応しい」と思い始めているファンが増えていても不思議ではない。
40歳のスペイン人監督は、モイーズ体制での11年間でも叶わなかった、1つの願いを叶えてくれる指揮官となり得るからだ。
その願いとは、リバプールに対する「格下コンプレックス」の解消。
リバプール市内のエバートン陣営は、長い日陰の歴史を持つ。「市内の最強2チームはリバプールの1軍と2軍」と言ったのは、半世紀以上も前に敵陣の将となったビル・シャンクリー。21世紀に入っても、この宿敵がトップ4から漏れている近年こそ2年連続で順位で上に立ったが、ファンが意識する直接対決では圧倒的に分が悪い。
リーグ戦のホームとアウェーで勝利する“ダブル”の快感を、最後に味わったのは四半世紀以上も前のこと。あのモイーズの下でさえ、計22回のリーグ対決で3勝12敗7引分けと負け越し、結局敵地では1度も勝てずじまいだった。