濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
続々とケージの導入が進む日本。
“格闘首都”との距離を縮める意義。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byMichiko Yoshida
posted2013/12/03 10:30
6年ぶりの日本での試合となった吉田(上)は安定した戦いぶりで終始ペースを握り、2Rにチョークスリーパーでタップを奪った。
DEEPに一時帰国した“メジャーリーガー”。
アメリカを目指す選手がいれば、帰ってくる選手もいる。
2008年からの2年間でUFC2勝3敗の戦績を残し、その後も海外の大会で4連勝を記録した吉田善行は、この日6年ぶりに日本マット帰還を果たした。といっても、本人の目論見としてはあくまで“一時帰国”だ。DEEPでチャンピオンを目指しつつ、結果を残してアメリカ再挑戦へのステップアップを考えている。
“元メジャーリーガー”がどんな闘いを見せるのかに注目が集まった吉田vs.韓国のストライカー・パーキーの試合は吉田の圧勝に終わった。「久々の試合でいいとこ見せなきゃって思ったら焦りが出て、決め急いじゃいましたね」と苦笑いした吉田だが、序盤から寝技に持ち込むと相手に何もさせず、パウンド、ヒジの連打でダメージを与えた上でバックからのチョークを極めた。
日本でも、アメリカと直結した闘いができる。
久しぶりに戻ってきた日本での試合だが、吉田にとって違和感はなかったのではないか。日本でもケージで闘い、ヒジ打ちを使うことができる。それが特別なことではなくなっている。DEEPケージやVTJ、パンクラスでの試合はアメリカと“直結”しているのだ。
もちろん、強豪が次々に“海外流出”することで国内が空洞化しかねないという不安もある。UFC(をはじめとする海外メジャー団体)と国内イベントの関係は、欧州サッカーとJリーグに似ていると言える。
とはいえ、選手がより強い対戦相手、より高いファイトマネーを求めて海外を志向するのは当然のこと。それを前提とした選手育成、団体運営を行なうことの重要性は、これからさらに増すだろう。世界の舞台で勝つことと、国内の盛り上げ。その両立はあらゆるスポーツにおける永遠のテーマであり、格闘技も同じなのだ。