濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
続々とケージの導入が進む日本。
“格闘首都”との距離を縮める意義。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byMichiko Yoshida
posted2013/12/03 10:30
6年ぶりの日本での試合となった吉田(上)は安定した戦いぶりで終始ペースを握り、2Rにチョークスリーパーでタップを奪った。
今、日本格闘技界はかつてないほどにアメリカとの“距離”を縮めている。
この秋、川尻達也、菊野克紀ら4名の日本選手がUFCと契約を結んだ。この数年間、DREAMを主戦場に活躍し、その屋台骨を支えてきた川尻がUFCに参戦するインパクトは大きい。川尻が世界最高峰の舞台で勝負することを望んでいたファンは多いが、それが実現するということは、彼にふさわしい“働き場所”が日本にはなくなったことも意味している。
団体・イベントも、海外志向の選手が増加するのに合わせて変化している。老舗団体パンクラスは元K-1ファイターのレイ・セフォーが旗揚げしたWSOF(ワールド・シリーズ・オブ・ファイティング)と提携。契約選手の相互派遣とともにWSOF日本大会の開催を目指し、さらにWSOF同様のデカゴン(十角形ケージ)導入も決めた。
かつてヒクソン・グレイシーを初来日させたバーリ・トゥード・ジャパンは『VTJ』として昨年末からケージイベントにリニューアル。アメリカ進出を狙う選手たちの“日本代表決定戦”と呼ぶべきマッチメイクが毎回、話題となっている。
“首都”アメリカを意識し、続々とケージ、ヒジ打ちを導入。
数年前からリングと並行してケージイベントを開催してきたDEEPは、11月24日に行なわれたTDCホールでのビッグイベントでもケージを使用している。パンクラスやVTJのような米アスレチック・コミッション認定ルールではないが、ヒジ打ちを認めたケージファイトがアメリカを意識したものであるのは間違いない。
UFCに女子部門が新設され、カンザスシティを本拠地とする女子団体インヴィクタFCが成功したことで、日本の女子選手にとってもアメリカでの闘いは現実的な目標になった。11.24DEEPケージに出場した杉山しずかも、アメリカを視野に入れる女子選手の一人だ。今回、男子同様のヒジありルールで試合を行なったのも“世界基準”を体感するという意味合いが大きい。
ただし、試合は予想外の苦戦となってしまった。ボクシング出身の韓国人ファイターであるキム・ジヨンを相手に1ラウンドこそテイクダウン、バックからの攻撃で優位に立ったものの、2ラウンドはガス欠状態に。金網に押し込んでからの攻めが続かず、キムの打撃をもらいドローとなった。
「1ラウンドで力を使い切ってしまって」と試合後の杉山。大会前、海外で闘う時には階級を下げたいと語っていた彼女は、この試合で「やっぱり(国際戦では)1階級上のパワーがないとキツい」と再確認したようだ。苦い経験ではあったが、彼女は明確に“対世界”への第一歩を踏み出したのである。