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<2014年の米ツアーを占う> 石川遼&松山英樹 「王者へのステップ」
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAFLO
posted2013/11/28 06:01
優勝が期待された松山だったが、波乱の幕開けに。
その大会の初日、松山は疲労性の胃炎でスタート前に欠場を決意。前週の開幕戦で3位に入り、第2戦では優勝候補と目されていたが、彼は戦いに参加できぬまま、母国への帰路についた。その2週間後、今度は上海で臨んだ第4戦のHSBCチャンピオンズで途中棄権。米ツアー正式メンバー1年目の始まりが、そんな波乱の幕開けになったことは、きっと何かの示唆なのだろう。「1年目こそが勝負」。どこからともなく、そんな声が聞こえてきた。
昨季のうちに、世界を股にかけた海外連戦も、そのための長距離移動やタフなスケジュールも経験し、タイガー・ウッズやフィル・ミケルソンといったビッグネームとの同組ラウンドも経験した松山は、すでに何もかも経験済みで残るは優勝だけだと思われがち。だが、今季の松山は知らないことのほうが多い1年生なのだ。石川の言葉を借りれば、初めて年間を通して戦う松山の今季がノンメンバーとして一時的に戦った昨季と「全然違う」ものになる可能性はある。
「アメリカにちゃんと住むってことが大事っすよね」
注目すべきは、その違い、その重要性を松山が早い段階から予想し、その環境に飛び込んでいく覚悟を決めていたこと。彼は昨季の快進撃の始まりとなったあの全米オープンの開幕前から、こう言っていたのだ。
「アメリカ、来たいっすよ。絶対やりたいっすよ。でも、まず、アメリカにちゃんと住むってことが大事っすよね」
米国に腰を据えての本格参戦。これからまだまだ、いろんなことに遭遇する米ツアー1年目。松山のみならず世界中から集まってくるすべての選手の視線の先に優勝の二文字がある。とはいえ、ハイレベルな米ツアーで優勝争いに絡み、勝利に輝くチャンスは千載一遇。日々戦う相手は、優勝争いの相手ではなく、次々に直面する諸々の厳しい現実だ。
あれよあれよという間に過ぎ去っていく時間の流れの中、そのスピード、その流れに流されることなく、米ツアーの舞台に踏みとどまることができるかどうか。
勝負は1年目。1年目こそが勝負。昨季の石川は、どうにか乗り越え、乗り切った。
今季は、松山の番だ。