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1万人を集めた盛況のトライアウト。
“独立L組”木田、小林宏の心模様。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2013/11/11 11:40
打者4人に対して安打性の当たりを許さず、経験値の高さを見せた木田(左)と小林宏(右)。現地視察に来た中日・落合GMは選手名こそ明言しなかったが「ここにいちゃいけないメンバーがいた」とトライアウトを総括した。
彼らの矜持を見るだけでも、イベントの価値がある。
5月から3カ月間、実戦復帰へ向けチームメートと練習を積んだ。元NPB選手。16年間で75勝は、独立からドラフト指名を目指す若手選手から見れば、偉大な実績である。必然的に技術的なアドバイスも増えていく。
その過程で小林宏は、投手としての基本を再確認できた。
「阪神の最後のほうから本来の調子が出せなくて、もがいていました。ピッチャーは、一度フォームを崩してしまうとなかなかいい時の形に戻せないものなんですけど、独立リーグで若い選手に基礎を教えながらトレーニングしていくなかで自分も基本に立ち返れて。いい時の感覚を取り戻すことができました」
8月にチームの一員としてマウンドに上がり、7試合の登板で2勝1敗、防御率は3.14。数字で判断すれば決してよくはない。しかし小林宏は、確かな手応えを掴んだという。
「僕のような選手は『抑えればOK』だけじゃダメなんです。フォームのバランスや真っ直ぐのキレとか、全体的なパフォーマンスで評価されると思っているんで」
トライアウトでは内野ゴロ3つに外野フライ1つと完璧に抑えた。「いい感じで投げられました」と安堵の表情を見せた小林宏は、この最終試験を「区切り」と表現しながらも、今後へ向けて意気込みを語った。
「もちろんNPBでもう一回やりたいですけど、オファーがあればどこでも、という気持ちはあります」
独立リーグでの研鑽はNPBの舞台でも必ず活かす――。
彼らの矜持を見られるだけでも、合同トライアウトを公式イベントにする価値はある。