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10年後にしか分からないことがある。
'03年ドラフトの成否を、今振り返る。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/11/08 10:30
糸井嘉男は、投手として指名され、打者として大成した珍しいパターン。現在はオリックスの主砲に成長。
鳥谷、翌年の能見以来、大きな成功例がない阪神。
松坂大輔(横浜高)の去就に沸いた'98年ドラフト、阪神は1位入札で藤川球児(高知商高)を指名した。そして藤川と同世代の久保田智之(投手・常磐大)を'02年ドラフトで5巡指名した。翌'03年にはウィリアムスが入団、ここにJFKが勢揃いし、彼らが勝利の方程式に定着するのは'05年から。'98年の藤川獲得から7年たっている。これが従来のノーマルな時間のかかり方である。
JFKが揃う以前の'03年には'85年以来のリーグ優勝を果たしている。これはドラフト戦略と言うより矢野輝弘('98年中日)、片岡篤史('02年日本ハム)、下柳剛('03年日本ハム)、伊良部秀輝('03年レンジャーズ)、金本知憲('03年広島)を他球団から獲得したトレード戦略の成果である。
そして現在の阪神は、この部分が突出した戦略によってチーム作りを進めている。'13年の主要メンバーのうち野手の藤井彰人、今成亮太、日高剛、西岡剛、新井貴浩、新井良太、坂克彦、福留孝介、投手の久保康友、スタンリッジ、加藤康介は他球団経由での入団である。
チーム作りの方法は様々で、トレードを主体にしたチーム作りは十分に個性の範疇だと思うが、ライバル巨人に対して「金で選手を買っている」と最も辛辣に批判したのは阪神ファンである。その巨人は原辰徳氏が2期目の監督に就任したあたりから生え抜き主体のチーム作りを進め、黄金時代を迎えようとしている。その落差に阪神ファンは怒り、自家撞着に苦しんでいるのである。
話がテーマから逸れた。ちなみに、阪神の数少ない野手の生え抜き、鳥谷敬(遊撃手・早大)は'03年の自由枠で入団している。'04年には能見篤史(投手・大阪ガス)、'05年には岩田稔(投手・関西大)を自由枠・希望枠で獲得しているが、'08年以降はチーム成績の乱高下にしびれをきらし、再びトレード戦略に舵を切って現在に至っている。