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注目の永井謙佑がたった700万円!?
Jの魅力を損ねる理不尽な新人契約。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byMiki Sano
posted2010/12/03 10:30
アジア大会で得点王となり、日本の初の金メダルに貢献した福岡大のFW永井謙佑。ロンドン五輪後の海外移籍も視野に入れている
アジア大会得点王・永井謙佑でも年俸はわずか700万円!
そして今、この制度の限界を浮き彫りにする選手が出てきた。
アジア大会で得点王に輝いた福岡大学4年生の永井謙佑だ。
永井は今年1月のイエメン戦で日本代表にデビューし、南アフリカW杯にはサポートメンバーとして帯同した。
今年11月のアジア大会はA契約の出場時間換算の対象試合となっており、レギュラーだった永井はA契約の基準も突破。ずば抜けたスピードを持ち、ロンドン五輪を目指すチームのエースとして期待されている。
すでに、浦和、名古屋、FC東京、神戸などが獲得に動いているとも言われている。
ところが、これだけの選手だというのに、どのクラブに入ったとしても1年目の年俸は700万円しかもらえないのだ(もしアジア大会に出場しておらず、C契約のままだったら、年俸上限は480万円だった!)。
A契約の権利を得たことで複数年契約は可能になったものの、永井がどのクラブに入るか迷うのは当然だろう。
このルールの撤廃はクラブの個性を際立たせる有利な点も。
新人獲得を自由化すると、資金力のあるクラブが有利になる、という指摘もあるかもしれないが、筆者はそれでいいと考えている。資金力で劣るクラブは、その分、必ず知恵を絞るようになるはずだからだ。
人材発掘に力を入れたり、育成に力を入れたり、それぞれの武器を磨こうとし、その結果、クラブの個性がより目立つようになる。
A・B・C契約というドメスティック・ルールを撤廃すると、強化担当者には“目利き”が求められるし、経営者には適正な年俸を判断する力が求められるようになる。
選手が戦っているのだから、フロントも戦うべきだろう。