Jリーグ観察記BACK NUMBER
注目の永井謙佑がたった700万円!?
Jの魅力を損ねる理不尽な新人契約。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byMiki Sano
posted2010/12/03 10:30
アジア大会で得点王となり、日本の初の金メダルに貢献した福岡大のFW永井謙佑。ロンドン五輪後の海外移籍も視野に入れている
サッカーのプロリーグの規約(ルール)に正解はなく、常に時代に合わせて微修正していくべきだろう。
今季から、日本国内のみに適用されていた「移籍金を『平均基本報酬』と年齢に応じた『移籍係数』の掛け算で算出する」という特別ルールが撤廃された。その結果、契約が切れた選手に関しては移籍金が発生しないことになり、選手の移籍が活発になった。
名古屋グランパスが闘莉王を移籍金ゼロで獲得できたのも、このルール変更のおかげだ。変更がなければ闘莉王の移籍金は2~3億円になっていたと推察され、そうしたら名古屋はこの日本代表DFを補強できず、Jリーグで優勝できなかったかもしれない。
クラブを守ろうとする“過保護”なルールを廃止したおかげで、資金の投じ甲斐のあるリーグとしてJリーグは変わりつつある。
新人選手の特殊な契約形態がJリーグの自由競争を阻んでいる。
しかし、だからといってJリーグにすぐにビッグクラブがうまれるかというと、そう簡単ではなさそうだ。まだ他にも、Jリーグには自由競争を阻むようなローカルルールがあるからである。
それはA契約、B契約、C契約という、新人に対するJリーグ特有の契約形態だ。
高校、大学、ユースを問わずアマチュア選手がプロになるときは、まず年俸480万円のC契約を結ばなければいけない。そしてJ1の出場時間が450分を越えると、B契約、およびA契約を結ぶことができる(J2での出場時間はJ1の半分に換算。日本代表Aマッチ、五輪および五輪予選、アジア大会、U20W杯本戦などもJ1の試合と同様にカウントされる)。
新人がA契約を結ぶ場合、1年目の年俸は700万円以下と決められている。良く言えば、クラブの経営の安定化に一役買っているルールだが、悪く言えば、新人を安く買い叩くためのルールにもなっている。
このおかげで経営者は新人が“外れ”だった場合でも、金銭的な損失を最低限に抑えられるが、選手にとっては本来1年目から手にできる正当な報酬を得られなくなってしまっている。