フットボール“新語録”BACK NUMBER
長谷部誠の体についた無数の傷。
ブラジルW杯はピッチ対策が不可欠!
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/09/06 10:30
コンフェデレーションズカップ第2戦、イタリアのセバスティアン・ジョビンコを追いかける長谷部誠。走るたびに芝がめくれるほどのピッチ状況だった。
「グラウンドが砂っぽかったんですよね。だからスライディングするたびに傷がついたんです」
長谷部誠(日本代表)
気の早い話になるが、2014年ブラジルW杯に臨むうえで、ひとつ頭に入れておかなければいけないことがある。
それはブラジル特有のピッチコンディションだ。
今年6月に開催されたコンフェデレーションズカップを取材したとき、驚かされたことがあった。第2戦のイタリア戦後、長谷部誠の体に鉤爪で引っ掻いたようなミミズ腫れの傷が無数についていたのだ。太腿、膝、すね、腕、手の甲……。大げさに言うなら、熊とでも戦ったあとのようだった。
最初は相手のスパイクに削られたのかと思ったが、数が多すぎるし、上半身にまであるのは変だ。いったい何が起こったのか? 試合の後、長谷部はこう答えた。
「グラウンドが砂っぽかったんですよね。だからスライディングするたびに傷がついたんです」
特にひどかったのが初戦のブラジル戦が行なわれたブラジリアのピッチ。芝が生えていないところを補うために、大量の砂がまかれていた。そのためにスライディングをしたり、転んだりするたびに、体に傷がついたのだ。
ワンタッチプレーを不可能にするピッチ。
それだけピッチコンディションが悪ければ、当然、プレーにも影響する。コンフェデ杯の試合の映像を見て、川崎フロンターレの風間八宏監督は「ダイレクトプレー(ワンタッチでのプレー)が少なくなっている」ということに気が付いたという。
風間監督はコンフェデ杯決勝のブラジル対スペインを例にあげた。
「あの技術力のあるスペインの選手たちが、ボールを止めるのに相当苦労していました。いつもならダイレクトでパスを出せるところで、意識して丁寧に止めてから次のプレーに移っていた。ピッチコンディションが悪くてボールがポンポン跳ねるので、止めるのが相当難しかったんだと思います」
「それに対してブラジルの選手たちは、たとえ1タッチ目でボールが浮いても、問題なく次のプレーに移ることができていた。子供のときからそういう環境でやっているので、多少ボールがズレても対処する技術があるんだと思います。いつもきれいな芝生でプレーしているヨーロッパ勢は、ブラジルW杯で苦労するんじゃないでしょうか」
スペインが決勝でブラジルに0対3という大差で敗れたのは、少なからず芝生の状態が影響していたはずだ。