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マッツァーリ体制が長友弾で好発進。
昨季9位のインテルに復活の気配。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2013/08/29 10:30
昨季9位に終わり、クラブ史上最低記録となる16敗を喫したインテルを立て直すべく招聘されたマッツァーリ(右)。昨季はナポリを2位に導き、2004-2005年シーズンはレッジーナで中村俊輔(現横浜FM)を指導した経験も持つ。
長友のヘディングゴールで幕を開けた新シーズン。
チームの潤滑油となり、スクデット5連覇時代の矜持を伝えるのは、ベテランの万能MFカンビアッソだ。今季開幕戦のスタメン中、優勝経験を持つ者はチーム10年目を迎える彼ただ一人だった。
「移籍市場がスクデットを決めるわけじゃない。2季前にユベントスが優勝したとき、シーズン途中まで『ミランの方が強い』と誰もが口を揃えていただろう? 俺は毎日の練習とグラウンドでの成果を信じるよ」
8月25日の開幕戦は、ジェノアをサンシーロに迎えた。
ヘビースモーカーで知られる指揮官が、ベンチで爪を噛みながら迎えた後半30分、DF長友佑都がチームの今季初得点となる先制ゴールを決めた。右サイドのMFジョナタンが上げた速いクロスに、左サイドから長友が飛び込みヘディングで押し込んだ。躍動する両サイドが、指揮官の標榜するスタイルに見事呼応した。
ロスタイムにFWパラシオが追加点を決め、新生インテルは開幕カードを2―0で制した。チームは未だ荒削りなれど、マッツァーリのスタイルは息づき始めている。
「2ゴールは、選手たちが私の指導についてきてくれている証だ。このインテルは、私が考えているより強くなっている」
新生インテルの今後を占う、王者ユベントス戦。
新しい監督、新しい選手。
新しい戦術、新しいクラブ。
インテルは大きく変わろうとしている。現在、クラブはインドネシアの巨大財閥による買収交渉の渦中にある。伝統あるインテルの歴史的転換点を肌で感じる選手たちは、あらためて高まる注目に、襟を正して今シーズンに臨むはずだ。
9月15日の3節には、早くも王者ユベントスとの大一番が控えている。8月初旬、米国ツアー中でのテストマッチでは1点ずつを取り合った90分の後、PK戦の末にインテルがユーベを下している。今季のネラッズーリは、カンピオナートの伏兵だ。新生インテルの真のポテンシャルは、サンシーロでの再戦で明らかになるだろう。