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人材が集まらない理由はなにか?
NBAチームに見るスタッフ育成の施策。
text by
葛山智子Tomoko Katsurayama
photograph byNBAE/Getty Images
posted2013/08/20 10:30
オーランド・マジックのホーム・アリーナで選手達に喝采を送るファン。1989年に創設された新興チームではあるが、様々な施策で急激にファンの数を伸ばした。
トレーニング、環境の他に必要な“権限委譲”の要諦。
スポーツの世界とはまた別の業種を見てみると、「サービスマスター」という企業が秀逸なサポート体制を取っている。
サービスマスターは病院や学校などのクリーニングを請け負う企業である。期待以上の状態に清掃できるようトレーニングを受けるが、それに加え掃除道具などの開発にも力を入れている。そうすることで、各スタッフが掃除や入院患者とのコミュニケーションに専念できるような環境を整備し、各スタッフが優れたパフォーマンスを上げることにつなげているのである。
スタッフが十分なパフォーマンスを上げるには、十分なトレーニングと充実したサポートツールを用意するだけでは足りない。権限委譲(エンパワーメント)をして、顧客との関わりの中で最高のパフォーマンスを発揮してもらう必要がある。
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そして、権限委譲の際には、何が一番優先されるべきかという明確な基準を設ける必要もある。
先のオーランド・マジックの例では、スタッフはゲストエリアにいるときは「携帯電話の使用禁止」というルールを徹底している。理由は顧客とのコミュニケーションに専念するためである。このように「サービス提供」にあたって、その基準となるルールの制定は、スタッフに明確な判断基準を示す役割をになっているといえよう。
そして各スタッフが、自身が考える最高のサービスをした際に重要なことは、評価と賞賛である。
優れた働きをした警備員を誉めたことで、周囲の何が変わったのか?
先ほどのSports Business Journalの記事によると、オーランド・マジックではこんなケースがあったという。
ある顧客が警備員にバーガーの販売場所を尋ねた。以前であれば、飲み物をこぼした人を見ても助けなかったが、その警備員はトレーニングの時のことを思い出し、「確認しますね」と声をかけた。警備員の職務を超えて、顧客に尽くす警備員をみて、マネジメントの1人はその警備員に近づき、そしてその行動に賞賛を送ったという。
このマネジメントの行動が、その警備員のモチベーションをさらに高めることにつながったことは言うまでもないだろう。そして周囲に対しても大きな意味がある。つまり、「望ましい行動とは?」についてのあるべき姿を示すことにもなり、スタッフが目指すべき行動の1つのモデルとなるのだ。