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人材が集まらない理由はなにか?
NBAチームに見るスタッフ育成の施策。
text by
葛山智子Tomoko Katsurayama
photograph byNBAE/Getty Images
posted2013/08/20 10:30
オーランド・マジックのホーム・アリーナで選手達に喝采を送るファン。1989年に創設された新興チームではあるが、様々な施策で急激にファンの数を伸ばした。
さて前回は、筆者のシドニーオリンピックでのボランティア経験から、顧客満足に結び付く従業員満足の上げ方について書いた。
従業員の満足度を向上させる理由は、それにより従業員のパフォーマンスを上げ顧客満足につなげるためだと書いたが、従業員が最高のパフォーマンスを発揮する施策を考える際によく聞かれるのが、「そもそも良い人材が集まらない」という言葉である。これはチームスポーツにおいて戦略を考える際にも出てくるフレーズかもしれない。
海外のスポーツチームでは、試合観戦者の満足度を高めるために様々なスタッフトレーニングを行っている。有名なものは、前回も事例の1つとして紹介したディズニーの経営ノウハウを学ぶことのできる「ディズニーインスティテュート(DI)」のプログラムである。DIのホームページによると、NBAのオーランド・マジック、NFLのアリゾナ・カーディナルス、テネシー大学のアスレチックデパートメント、米国体操協会、2010FIFAワールドカップなどが同プログラムを受けている。
トレーニングプログラムでは、顧客に対応する際の姿勢や行動基準などを学ぶ。オーランド・マジックではDIの研修を受けたあと、そのスタッフの行動が変わったという。例えばグッズショップでグッズを購入した子供がいたときに、通常であれば支払いをする親にレシートを渡すが、研修後のスタッフはその子供にレシートを丁寧に渡しコミュニケーションを取ったという(Sports Business Journal 2010年11月29日)。
個人スキルが上がったならば、それをフルに発揮させる環境が必要。
確かにトレーニングも重要なのだが、トレーニングがすべてでもない。
トレーニングを受けるだけで、スタッフが顧客満足度をあげるような行動をとることができるわけではない。普通の人が素晴らしいパフォーマンスを生み出すには、スキルを磨くこともさることながら、そのパフォーマンスを発揮する環境も整備する必要がある。
例えばオリンピックやワールドカップなどの国際大会では、スポンサー企業の提供するITインフラなどはスタッフの円滑なサービス提供に大いに役立っている。このようにスタッフがサービス提供に集中できるような、もしくはより良いサービスを提供するために役立つような環境を作らないと、スタッフの生産性や提供サービスの質の向上には結び付かない。