ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
モデル、高額チケット、ネット配信……。
個性豊かな女子ゴルフ界の試み。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO
posted2013/08/01 10:30
サマンサタバサ・レディースでは、ホールアウト後にイベントを開催。所属の(左から)堀奈津佳、山村彩恵、香妻琴乃らもイベントを楽しんだ。
スタッフの育成より大変な“男社会”への進出。
企画段階では苦労の連続だった。ゴルフとは無縁の若い女性スタッフが多い同社とあって、「ゼロか、マイナスからのスタートでした」と畠山さんは振り返る。ルールやクラブなど知る由もない。未経験のスタッフに、シミュレーションゴルフを体験させてみると、後ろにボールを打ち出してしまうアクシデントもあった。ドライバーは通称「大きいのが付いている“棒”」と呼ばれていた。
しかしスタッフがゴルフへの理解を深めるよりも大変だったのが、“男社会”への進出だった。女子ツアーとはいえ、会場の設営、試合の進行など運営に携わるのはほとんどが男性。ピンフラッグやティマーク、スコアボードなど細部にまで“かわいいモノ”にこだわる女性たちの視点は男性スタッフに伝わりづらかった。ツアー開催直前、東京・青山にあるオフィスで最終的な打ち合わせを終えた畠山さんは、ヘトヘトになった体を引きずり、表参道へと向かった。両手の親指の爪に、ツアーマスコットのネイルアートを施すためだ。「男の人は、くだらないって思うでしょう? でも、そんなところに拘りたい。これを伝えていくのが、一番苦労することなんです」
試合に付加価値を生む仕掛けは大きな流れに。
苦労のかいもあり、今ツアーの動員数は3日間で昨年比約1.3倍の15400人。また、通常は来場者数のうち女性が占める割合は、全体の10%未満に過ぎないが、今トーナメントでは25%にアップした。
同じように、積極的に付加価値を生みだそうとしている試合が最近、女子ツアーに多く見受けられる。サマンサタバサに先駆けること1カ月。こちらも開催2年目となった6月のアース・モンダミンカップでも、これまでにない試みが行われていた。
トーナメントを主催するアース製薬の大塚達也社長はかねてからマスターズの大ファンであり、数年来オーガスタナショナルGCへと足を運んでいる。そしてコース内で撮影した写真を蓄積し、昨年新たにスタートさせたのがアース・モンダミンカップなのだ。
会場となったカメリアヒルズは“オーガスタ化”されていた。スタンドなどの様々な設備は、深い緑色と白をベースカラーとし、それぞれにあしらわれるロゴも、マスターズと同じものを採用した。