オリンピックへの道BACK NUMBER
新主将・木村沙織率いる日本代表が、
8月ワールドグランプリで本格始動。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2013/07/29 10:30
5月に行なわれた記者会見で主将就任の抱負を述べ「今までは、1年1年で目標やプランを決めてきたけど、今回は違う。初めて五輪までを1つのサイクルとして考えられるようになりました」 と語った木村沙織。
竹下や荒木とは異なるタイプの主将として。
小学2年生でバレーボールを始めて以来、初めてのキャプテンであるという。打診され、「自分が?」と驚きもあった。
これまで主将を務めてきた竹下佳江や荒木絵里香は、どちらかと言えば、闘志を前面に押し出す選手だった。自分はそうしたタイプではないと感じていたからではないか。
その上で引き受けたからこそ、あくまでも自然体であろうとしている。
「自分らしくできればいいと思います」
と抱負を語る木村は、思い描くチーム像をこう表現している。
「めりはりがあって、みんなが言いたいことを言えるチームになれば」
この数年、チームの中心の一人である自覚は高まっていた。「チームを引っ張っていきたいと思っています」などの発言内容にも表れていた。そんな木村が主将のチームがどのようなカラーを出していくのか、注目したい。
竹下の後継者を含め、生き残り競争が始まる。
もうひとつの焦点は、これからの全日本を担うメンバー争いだ。
チームの新しい出発であるということは、選手たちにとって代表に食い込むチャンスであることを意味する。それを物語るように、6月26日に発表されたワールドグランプリのエントリー22名中、ロンドンの代表だった選手は4名と、大幅にメンバーが入れ替わった。
これからのチームを考える際に、昨年まで竹下佳江が不動の地位を占めていたセッターを、誰が引き継いでいくのかもポイントになる。22名の中には4名のセッターが選ばれている。その4名にかぎらず、ほかにも有望視される選手たちがいる。
また、ロンドン五輪の前、代表経験を持ちながらオリンピックのメンバーから外れた選手たちにとっては、巻き返す機会となる。セッターをはじめ、代表の生き残りをかけての競争が始まることになるのだ。
振り返れば、ロンドン五輪の銅メダルは、レシーブとディフェンスに磨きをかけるなど確固とした方針のもと、北京五輪を経験したベテラン選手と若い世代の選手が融合したチーム力の発揮があればこそだった。
今までのチームにどのような新味が加わっていくか。3年後を視野に入れる選手たちがどうアピールしていくのか。そしてチームにどう求心力が築かれていくのか。ロンドンでは果たせなかった世界一へ向けての第一歩である。