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新主将・木村沙織率いる日本代表が、
8月ワールドグランプリで本格始動。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2013/07/29 10:30
5月に行なわれた記者会見で主将就任の抱負を述べ「今までは、1年1年で目標やプランを決めてきたけど、今回は違う。初めて五輪までを1つのサイクルとして考えられるようになりました」 と語った木村沙織。
28年ぶりとなる銅メダルを獲得したロンドン五輪から1年。バレーボールの「ワールドグランプリ」が8月2日に開幕する。女子のナショナルチームによる国際大会で、20カ国が参加し、予選ラウンドと決勝ラウンドの形式で争われる。新しいチームの本格的なスタートの場である。
昨秋、続投が決まった際、眞鍋政義監督は言った。
「次のリオデジャネイロ五輪でいちばん輝くメダルを獲れるのか悩みましたが、いけるだろうと考えて引き受けました」
つまり、3年後の金メダルへ向けてのスタートでもある。
「(ロンドン五輪の)金メダルのブラジル、銀メダルのアメリカとは数字的なものを見ても差があります。同じことをしても勝てないので、日本のオリジナルを追求していきたいと思っています」
全日本の登録選手44名を発表した今年5月の新チーム始動時に、眞鍋監督はこう語っている。
リオ五輪までの現役続行を決意した木村沙織。
新チームのひとつの焦点は木村沙織が主将に就任したことだ。
実は木村は今年の11月に行なわれる「ワールドグランドチャンピオンズカップ」で引退しようと考えていた。オリンピックでメダルを獲り、トルコに渡り、海外チームでプレーし、バレーボールでの経験はひととおりできた、と思っていたからだ。長年、第一線で気を張り続けてきたこともあっただろう。だから今年初めにトルコに自ら訪ねてきた眞鍋監督から主将の打診を受けたときも、最初は辞退した。
眞鍋監督いわく、「説得にはひと月半ほどかかった」という。
その期間には、木村の内面に変化があった。
「キャプテンになったらどんなチームになるんだろう」
そう考えている自分がいたことに気づいたのだ。主将を断ったら、いつか後悔するかもしれないとも思った。そして主将を引き受けた。それはリオデジャネイロ五輪まで現役を続ける決意でもあった。