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“勝利の味”を知る闘将の密かな悩み。
楽天にどうしても優勝が必要な理由。  

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中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byHideki Sugiyama

posted2013/07/16 12:00

“勝利の味”を知る闘将の密かな悩み。楽天にどうしても優勝が必要な理由。 <Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

7月12日の西武戦、代打で登場した元楽天の渡辺直人が逆転負けのきっかけとなっただけに、星野監督は「ここのファンはわからんね」と悔しそうだった。

他の球団にあって楽天にない「勝利の歴史」。

 他の11球団にあって、楽天に唯一ないもの。それは「勝利の歴史」である。

 '09年に2位となり一度だけAクラス入りしたが、リーグ優勝は経験していない。勝つ喜びを知らないということは、本当の意味での負ける悔しさを知らないということでもある。

 贔屓チームがなかなか勝てないがゆえに、楽天ファンは楽天ファンなりに野球観戦の楽しみ方を工夫してきたのだと思う。だからときに敵チームの選手にもホームランを期待して歓声を送る。久々に登板し力を出し切れなかった投手には労いの拍手を送る。

 ただし、永井への拍手に対し星野監督は「俺には理解できない!」と発言したそうだが、それももっともだと思う。

 なぜならチームはファンが育てるという面もあるからだ。サッカー記事では評論家などがサポーターに対し「もっと怒れ」と盛んにあおる。それが必ずしも健全なことだとも思えないのだが、ブーイングを送るというのも、スポーツ観戦の楽しみ方のひとつだし、愛情表現のひとつの形である。

楽天ファンが次の段階に入るためにも、今年こそリーグ優勝を――。

 阪神の桧山進次郎がかつてこんな話をしていた。

「メジャーの場合、弱い球団でも地元では、だいたい勝率が5割近いじゃないですか。あれってお客さんが、敵のところへ行って負けるのはしょうがないけど、ホームでは絶対に勝たせるという執着心があるからなんですよね。阪神もそうなんですけど、それが地域密着というか、ホームのよさ。他球団の選手も甲子園の盛り上がりはえげつないっていいますもんね。異様な雰囲気だ、と。僕らはそんなファンに高められているところもあるんです」

 極端な例だが、阪神はよくも悪くもファンの「執着心」がチームを支えている。

 それと同じことを今すぐ楽天ファンに求めるのは酷だろう。それよりも、楽天のような新興球団の場合は、逆の面も言えるのではないか。つまりチームがファンを育てるという論だ。

 そのためにできること――。それはただひとつ。今季こそ、リーグ優勝するということだ。一度、美酒の味を覚えれば、楽天ファンの応援スタイルも変わってくるはずだ。

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