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3年目にして到達した“安定”の域。
それでも黒田博樹はメジャーを去る? 

text by

菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byAP/AFLO

posted2010/10/04 10:30

3年目にして到達した“安定”の域。それでも黒田博樹はメジャーを去る?<Number Web> photograph by AP/AFLO

黒田の奮闘はあったものの、資金難から適切な補強が行えず、プレーオフ進出を逃した。ヤンキースで一時代を築いたジョー・トーリ監督も退任

黒田本人が分析した、メジャーで成功した理由。

 もちろん黒田の成功には明確な理由がある。数週間前に本人を直撃した際にいくつかの理由を教えてくれた。

 まずは右肩の状態だ。過去2年間は右肩に不安を感じながら投げていたが、今シーズンは1年を通して万全の状態で投げられたのだという。

 次に中4日登板に完全に適応できたことを挙げている。昨シーズンまでは中4日間の調整が手探りの状態だったようだが、今シーズンは完全に自分のルーティーンが完成していた。そのため疲労を感じながらマウンドに上がることはほとんどなかったと説明してくれた。

 また、捕手たちが黒田の投球を完全に理解してくれたことが大きかったようだ。球種を含め黒田がどんな投球をするかを把握することで、捕手のリードも明確になり、黒田自身も納得できる意思の疎通がとれた組み立てができるようになった。

「来年に向けて手応えを掴めた1年だった」と自身も納得。

 だが一番の理由はそうではない。

「今年は周りが見えて自分の投球、スタイルを把握しながら投げられている。打者に対して、打ち取る形と配球を自分の中で組み立てられている。去年までは悪ければ(投球の)イメージがつかずただ単に投げている状態だった。今年はいろんなイメージを持ち、次のボールに結びつけるボールを考えながらのピッチングができつつある」

 いくら体調が過去2年と比べて良くなっても、球場、気候条件等々で投球は変化するものだ。それでも毎試合好投を続けられたのは、黒田の投球術の進化に他ならない。

 今シーズン何度か黒田を取材し、試合後に何度となく「調子自体は良くなかった」とか「何とか粘って投げられた」という言葉を耳にした。昨年までなら調子が悪い時に自分の投球をするのに苦心してきたが、今シーズン(特に後半戦)は試合の序盤で自分の投球を把握し、その時の調子に応じて投球を組み立てることができるようになっていた。投げる球種はほとんど変わっていないのだから、黒田が自分のピッチングに対する理解度を高めることで、その“深み”が増しているのだろう。

黒田の去就は「白紙の状態」。メジャー残留か、それとも……?

 メジャー3年間で着実に成長を遂げた。だが黒田は、自分の投球が“完成”したとは思っていない。そして以下のように付け加えた。

「年齢を考えるとどこまでいけるかわかりませんが、今後もさらに進化したいと思いますし、進化し続けられるまでしていかないといけない世界だと思っています」

 だがすでに日米のメディアが「日本復帰」を報じているように、シーズン終了後にはFAとなる身である。黒田自身は「白紙の状態」を強調し、来シーズンに向けて揺れ動く胸の内を吐露してはいるのだが。

「本当に何も決まっていません。いろいろな報道がされていますけど、僕自身がわからないのに他の人がわかるわけがないでしょう」

 本人の意志を尊重しなければならないと理解している反面、来シーズンもメジャーのマウンドで3年かけて築き上げた深みのある投球を披露してほしいと願っているのだが、果たして……。

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