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クローザーとして蘇った上原浩治。
MLBきっての“モテ男”の来季を占う。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKYODO
posted2010/10/06 10:30
「巨人軍は紳士たれ」以上に厳格な規律があるオリオールズ。なんと長髪や髭まで禁止されているほどだ。そこで、上原はもみ上げを……
このオフ、上原浩治は「モテモテ」や、きっと。
今季のメジャーリーグ後半戦、日本での報道はイチローの10年連続200安打に特化していたが、オリオールズの上原の活躍も見過ごしてはならない。特に次の事実はアメリカでも高く評価されている。
上原は7月16日のブルージェイズ戦で四球を与えたのを最後に、2カ月以上も四球を出していない。
ということは8月19日にチームのクローザーを任されてからは、四球でランナーを歩かせたことがないのである。
四球を出していない2カ月以上の間に奪った三振は44個で、三振と四球の比率を重視するアメリカでは上原の投球内容は質の高いものと評価されている。
しかもK/9と呼ばれる9イニングスあたりの奪三振率は11.3。クローザーとして超一流だ。
上原がオリオールズと結んだ2年契約は今季で終了し、オフにはフリーエージェントの権利を獲得する。35歳という年齢的な問題はあるにせよ、上原がオフの移籍市場で単にモテるのではなく、「モテモテ」になるのは投球内容が中身をともなったものだからである。
上原はクローザータイプ? '07年巨人時代と酷似する数字。
2009年、上原はメジャーに移籍するにあたって先発にこだわったが、巨人時代の数字を見てもクローザーを務めたときの方が効果的な働きをしている。
シーズン | イニング | 奪三振数 | 与四球数 |
---|---|---|---|
2007年巨人 | 62回 | 66 | 4 |
2008年巨人 | 89回2/3 | 72 | 16 |
2009年オリオールズ | 48回2/3 | 48 | 12 |
2010年オリオールズ | 44回 | 55 | 5 |
注目すべきは2007年に巨人でクローザーとして残した数字で、62イニングスを投げて奪三振数は66個、与えた四球はわずか4個にしか過ぎない。「上原に追い込まれては太刀打ちできない」というイメージが確立していて、打者も早いカウントから打って出るため、四球がほとんどなかった(打ってもファウルになって、三振で終わる――というパターンも多かった)。
今季の後半戦の数字は、2007年の働きを国を超えて再現していると言っていい。前半戦こそ故障者リスト入りしていたが、6月29日に復帰して以降は小気味のいいテンポが戻り、加えて生来のコントロールの良さも手伝って、とにかくストライクが先行する。
9月29日のレイズ戦では、横浜でプレーしたこともあるジョンソンに対してフルカウントとなったが、最後は内角ギリギリを攻めて見逃しの三振でセーブをマーク。自信がみなぎる投球を見せた。