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日本球界に必要なのは豪腕型のボス!?
MLBコミッショナーの統治力と緊張感。 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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posted2013/06/21 10:31

日本球界に必要なのは豪腕型のボス!?MLBコミッショナーの統治力と緊張感。<Number Web> photograph by Getty Images

オールスター戦の概要を説明するバド・セリグ氏。今年はじめには、MLBとしての将来の目標として「アメリカと日本の王者が対戦するような大会を実現させたい」とも語っていた。

 問題の報告会見で、「腕組み」はいかんだろ。

 プロ野球統一球の、反発係数問題である。

 加藤良三コミッショナーは、6月12日に行われた初めての会見で、ふと気が緩むと腕組みをしそうになっていた。

 仕草を極端に単純化してしまえば、腕組みは不満の表れである。自分が置かれた立場に納得いかないものがあったのではないか──。そう思わざるを得ない態度だった。

 リーダーシップを取る立場にある人間が、毅然とした態度を取っていないと、その組織自体が脆弱なものに見えてしまう。今回の統一球問題は、日本野球機構の組織としてのひ弱さを図らずも露呈してしまったことになる。

 事務方のトラブルが起きた場合、どうしてもアメリカと日本を比較したくなってしまう。加藤コミッショナーが「私のガバナンスに対する監督不足だった」と話していたが、もともと日米のコミッショナーの間では統治能力、権限に大きな違いがある。比べるだけ無駄、という気さえしている。

多数の改革を断行するMLBコミッショナーの辣腕ぶり。

 ただし、現状のプロ野球界を見ても、アメリカ型のガバナンスを理想とするのは間違ってはいないと思う。

 MLBのバド・セリグ・コミッショナーは1992年から実質的に現職についているが(正式にコミッショナーとなったのは1998年から。それまではacting commissionerという肩書)、20年以上の間に様々な施策を実行してきた。主だったものを挙げてみると……。

・3地区制の導入、そしてワイルドカードの創設(1994年)
・インターリーグ(交流戦)の導入(1997年)
・ダイヤモンドバックス、デビルレイズの新球団創設、ブリュワーズのアメリカン・リーグからナショナル・リーグへの変更(1998年)
・4月15日を「ジャッキー・ロビンソン・デー」に(2004年)
・ワールド・ベースボール・クラシックの創設(2006年)
・きわどい本塁打についてのビデオ判定の導入(2008年)
・ワイルドカードによるポストシーズン進出チームを各リーグ2枠に増加(2012年)
・アストロズのアメリカン・リーグ西地区への変更(2013年)

 こう見ると、次から次へと重要な施策を打ち出し、実行に移してきたことが分かる。これは何も独断で行なっているわけではなく、状況に応じて、30球団の関係者、選手会などとの交渉を経て、実施されたものばかりである。想像するに、単独案件にばかり関わってはいられないから、同時に数十件の重要案件を考慮しているのが分かる。

 圧倒的なガバナンス力にリーダーシップ、優秀なスタッフが周りにいるのは明白だろう。事務方の力の違いも透けて見える。

 書いていて、なんだか情けないし、悲しい気分になってしまう。やっぱり、こうした統括組織、団体も誇りの持てるものであって欲しい(柔道なども含めて……)。

【次ページ】 パド・セリグは常に緊張を強いられる立場だが……。

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