プレミアリーグの時間BACK NUMBER
スキャンダルなんて関係なし!
国民は“至宝”ルーニーを愛し続ける。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2010/09/15 10:30
代表で久しぶりに得点を挙げたルーニー。 買春スキャンダルにもかかわらず、その人気は衰えを知らない
司令塔としての能力を発揮し、思い通りにゲームを運ぶ。
EURO予選2試合でのルーニーは2トップの一角としてプレーした。イングランドの4-4-2は南アで「時代遅れ」と酷評されたが、強敵不在の本予選では通用する。加えて、ルーニーの役割には変化がある。W杯では、中盤左サイドのジェラードとの連係を意識しながらボックス内に顔を出す動きに重点を置いていたが、今回は、前線のパートナーの背後で自由に動きつつ、中央から敵を脅かしていた。
結果としてルーニーは、いわゆる「10番」として攻撃を操るという自分好みのプレーができるようになった。ブルガリア戦では、コンビを組んだジャーメイン・デフォーのハットトリックを含む全4得点に絡んでいる。スイスから奪ったゴールにしても、フィニッシュ自体は単純だったが、デフォーがCBを引き付ける隙にフリーでゴール前に侵入した動きは、シャドーストライカーとして味のあるものだった。軽く両の拳を握り締めただけの控えめなゴール・セレブレーションは、自身が私生活で要らぬ注目を浴びていることを承知してのことだろう。イライラを募らせて自己制御を失い、TVカメラの前でファンに毒突いた南アでのルーニーとは違っていた。システムを微調整したカペッロ監督と共に、W杯での失敗から学んでいるようだ。
マンUでも“ゴール&アシスト”のラッシュを披露する?
もちろん、ルーニーにはクラブでの活躍も期待できる。昨季から主力の顔ぶれに変化のないマンUでは、ディミタル・ベルバトフがサポート役を務め、左右のウィンガーがクロスを供給するスタイルが今季も主流だ。アレックス・ファーガソン監督が「本来の姿に戻りつつある」と笑顔で語っているように、昨季のマンUに合計34得点をもたらしたルーニーの爆発が再現されないとする理由は何もない。
長引いていた足首の怪我も癒え、思う存分に汗を流せるようになったルーニーは、マンUの赤を着ていようが、イングランドの白を着ていようが、間違いなくW杯期間中よりもスリムに見える。“ノーゴール”のトンネルを抜けたことで、心身両面でコンディションはさらに上向いていくだろう。エースとして、チャンスメイカーとして、頼られるルーニー。いろいろな面で心配させた国民を、“ゴール&アシスト”のラッシュで喜ばせてくれる日も遠くはなさそうだ。