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ミランの方針転換でセリエAが大変身!
スター選手が集まる魅惑の激戦区へ。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byEnrico Calderoni/AFLO SPORT
posted2010/09/16 10:30
2006年から昨年までインテルで活躍し、スクデット連覇にも多大な貢献をしたイブラヒモビッチ。わずか1年後、ブルー&ブラックからレッド&ブラックのユニフォームへ!
今季のセリエA勢力図は、8月最後の数日間で激変した。
6連覇を狙うインテルに代わり、電撃的に2人の強力FWを獲得したミランが優勝争いのトップに躍り出ることになったのだ。近年、積極的な補強を推し進めずにきたミランの突然の方針転換は、カンピオナートの行方にどのような影響を与えるのか。
新加入のイブラヒモビッチとロビーニョだけではなく、パト、ロナウジーニョ、インザーギまでいるのだから、ミランサポーターに「夢を見るな」と言うほうが無理な相談だろう。オーナーであるベルルスコーニ首相の狙いもまさにそこにある。シェフチェンコやカカの放出に代表される近年の緊縮財政路線は支持離れをいっそう加速させてしまった。'80年代へ回帰したかのような期限ギリギリの豪華補強劇は、大票田たるサポーターの支持率を回復させるための政治的パフォーマンスと見られているのだ。
戦術の高度化・複雑化が進むにつれ、チーム作りのための夏のプレシーズンの重要度は著しく高まった。そのため、核となる大物選手の獲得交渉は早めにまとめ上げ、新チームの熟成を急ぐのがビッグクラブの常道である。
しかし、ベルルスコーニはそれを完全に無視し、「1年間レンタル後の完全移籍“義務”+移籍金3年分割払い」という新たな資金捻出の奇策を打ち出してまで、イブラヒモビッチ獲得に踏み切った。
不動で構える王者インテル、漁夫の利のローマ!?
ベルルスコーニの「動」に対し、王者インテルのモラッティ会長は「静」を貫いた。
新指揮官ベニテスが熱望したMFマスチェラーノ(現バルセロナ)とFWカイト(リバプール)の獲得を見送り、毎年夏の恒例だった大盤振る舞いを封印したのだ。
十分すぎるほどの戦力を備えていることもあるが、UEFAが来季から導入する「ファイナンシャル・フェアプレー制度」の本格審査を前に、クラブ収支の健全化を進める必要にも迫られているからだ。とはいえ、ミランに加入したのがスクデット連覇に多大な貢献をした、1年前に出ていったばかりの元エースとあれば心中穏やかではいられない。1月の補強は確実な情勢だ。
ミランの豪華補強で、思わぬ恩恵に預かったのはローマである。
超大物2人の加入に出場機会を絶望視したFWボリエッロが8月31日、ローマへの移籍にサイン。コンスタントに結果を出す大型FWの彼は、どこも喉から手が出るほど欲しい逸材だ。ユベントスとの争奪戦を制しての獲得だけに、ラニエリ監督もご満悦。「彼のような男は、私の人生を変える」と言うほどの惚れ込みようである。インテルと揉めていたCBブルディッソ獲得交渉もようやく解決を見たことで、攻守の駒が揃ったと鼻息は荒い。