日本代表、コンフェデ道中記BACK NUMBER

ホームとアウェイではまるで別人!?
本気のセレソンと90分間戦う意味。 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2013/06/15 08:03

ホームとアウェイではまるで別人!?本気のセレソンと90分間戦う意味。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

昨秋ポーランドの地で、6年ぶりにブラジルと対戦して0対4と完敗している日本代表。その前は2006年のドイツW杯1次リーグで対戦し、1対4で敗れている。通算成績は2分7敗である。

全てのブラジル人が、サッカーでは勝利以外認めない。

 トゥルシエ、ジーコ、オシム、岡田武史と指揮官が変わり、日本は世界のトップクラスとアウェイで対戦する機会を与えられるようになってきた。

 絶頂期のフランス代表に子ども扱いされた2001年3月の“サンドニの悲劇”では、ジネディーヌ・ジダンだけでなく7万7000人の観衆にも圧倒された。2005年3月に行われたW杯予選では、11万人の男たちがブーイングを浴びせてくる首都テヘランでのイラン戦のような、異様な空気も経験している。

 だが、ブラジルのホームゲームは、ジャパンブルーのユニフォームに刻まれてきたこれまでの経験とは明らかに別次元なのである。6万8009人を収容するブラジリアのエスタジオ・ナシオナルは、日本がいまだかつて触れたことのない空気に包まれるだろう。あえて言うなら'99年のパラグアイ戦に近いが、それにしてもブラジルのホームゲームには及ばない。

 性別や年齢や出身地に関係なく、この国の人々は勝利しか認めない。代表選手は選ばれし者の責任と誇り、それに使命感を背負ってピッチに立つ。覚悟の大きさと決意の深さは、中立地やアウェイでのゲームと比較にならない。

ホームで本気になったブラジルと90分間まともに戦えるのか?

 ブラジルとは昨年10月に顔を合わせ、持ち味を発揮する時間を作ることができた。0対4で敗れたものの、日本らしさがブラジルを脅かすシーンがあった。

 だが、ポーランドで行なわれた一戦は、いますぐ記憶から締め出したほうがいい。ブラジルを取り巻く環境は、8カ月前とはまったく違う。参考資料になるはずがない。

 日本相手に初めて本気になるブラジルに、間もなく我々は遭遇する。過去9回の対戦で一度も勝ったことがなく、わずか5点しか奪っていない相手が、90分間にわたって神経を研ぎ澄ましてくる。

 カフェテリアで会った巨体のおばさんは、「コンフェデを観に来た」と言うと「ああ」と頷き、「ブラジルと日本がやるのよね」と返してきた。アパートの持ち主の女性は、エスタジオ・ナシオナルの旧称がマネ・ガリンシャということを知っていた。自分が生まれる前に活躍したかつてのスーパースターを、はっきりと認識していた。

 ブラジルという国には、サッカーの遺伝子が大地に深く根ざしている。イラク戦直後は均等だった楽しみと不安のバランスが崩れないように、僕は必死に格闘している。

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