日本代表、2014年ブラジルへBACK NUMBER
森本がエースとなる必須条件は、
本田ばりの「ボールを収める技術」。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2010/09/08 12:05
スタンドで見守っていた新監督のアルベルト・ザッケローニも喜んでいたに違いない。
新しいエース候補として注目を集めている森本貴幸が2試合連続で先発し、2ゴールを挙げた。代表では昨年10月のトーゴ戦以来、約11カ月ぶりのゴールにあまり感情を表に出さないタイプの森本も、チームメイトに祝福されると満面の笑みを浮かべていた。
圧巻だったのは1点目。
パラグアイ戦でも長友佑都のクロスに点で合わせるように飛び込むシーンがあったが、「パラグアイ戦の映像を見て、クロスのときにどんな感じで(森本が)入ってくるのか確認してイメージをつかんでおきましたから」と言う長友の左からのクロスに、タイミングよく入ってヘッドで合わせた。
「佑都クンがいいセンタリングを上げてくれて、うまく合わせられてよかった」
クロスが入ってくる瞬間、森本は一瞬スピードを上げてゴールマウスから遠ざかると見せかけてゴール正面に入る動きで相手ディフェンダーのマークを振り切っている。相手のマークを一瞬で外してしまう森本の持ち味が発揮されたゴールシーンだった。
パラグアイ戦に続き、このグアテマラ戦でも森本は4-2-3-1の1トップに入った。基本的には前線の中央に張り付き、最終ラインにストレスを与え続けていた。この日はゴールを狙う意識が非常に強く、香川真司のシュートのこぼれ球にも反応して2点目が生まれている。
「うしろの3人(本田、香川、乾)は本当に技術が高いので、僕は余計なことをしないで真ん中でフィニッシュのことだけを考えていました」
自分の役割に専念したことで、見事に結果へと繋がっていたのだ。
ジーコは中田、オシムは高原、ザッケローニは森本?
岡田ジャパンでは、先発は1試合のみ。スーパーサブとして使われてきたが、南アフリカW杯では1度も出場機会がなかった。しかし、22歳のストライカーに対する周囲の期待は高く、原博実監督代行は清水エスパルスで好調を持続している岡崎慎司ではなく、森本を敢えて先発で使ってきた。
これはおそらくザッケローニの意向を反映しての起用だ。
ザッケローニは8月末に日本協会の小倉純二会長と会食したときに、エース候補としてしっかり育てていきたいと森本への期待を口にしたという。
イタリア人のザッケローニは戦術を細かく指導するタイプの監督で、イタリア語を話せる森本と直接コミュニケーションを取ることができる。通訳を介さずに自分の考えなどをそのままストレートに伝えることができる選手がいるのは、ザッケローニにとって非常に大きな意味を持つ。
過去の日本代表を振り返ってみても、ジーコはイタリア語で中田英寿と、オシムはドイツ語で高原直泰と直接コミュニケーションを取っていて、それぞれ信頼も厚かった。イタリア語を話せるのは今回のメンバーのなかでは森本と、パルマに留学経験のある川島永嗣ぐらい(チェゼーナに移籍した長友は目下、猛勉強中)。森本はあまり多弁なほうではないが、今後はザッケローニの考えをピッチ内でチームに伝えていくことも期待されているように思う。