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ファンハール監督が推し進める、
バイエルンの“バルサ化”計画。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2010/08/29 08:00
バイエルンの下部組織からはドイツ人の有望株が続々。
クラブを去る選手に対して素っ気ない態度をとる方で、バイエルンの下部組織出身の選手については丁重に扱う。昨シーズン途中に契約を結んだミュラーには、8月に新たな契約を提示。年俸のアップを含めて、2015年まで契約を延長した。さらに、ラームやシュバインシュタイガーとも契約延長にも動き出しているという。
また、昨季までレバークーゼンにレンタル移籍中だったクロースの復帰を願っていたのもファンハールだ。レバークーゼンはもう1シーズンだけレンタル移籍を認めてほしいと主張したが、これをあっさりと却下。下部組織出身で「ドイツの至宝」と呼ばれる20歳の攻撃的MFは今季から再びバイエルンでプレーすることになった。
チームがファンハールの理想の近づいてきているのは、今季の開幕戦のスタメンを見ても明らかだ。クロースを始め、11人中6人の選手が下部組織出身者で占められていた。
ヘーネス会長もファンハールの思想の信奉者に!?
注目すべきはヘーネス会長までファンハールの理想像に染まり始めていることだ。昨季途中までGMを務め、現在は会長となったヘーネスは、これまで現場の意向とかけ離れた補強に動くことが多かった。下部組織出身者がクラブから出ていく一方で、ティモシュク、バウムヨハン、ソサなど、監督の望んでいない外国人選手がバイエルンにやってきたのも、彼の意向が大きかった。そんなヘーネスもこれまでの自身のポリシーと反するような発言を残している。
「イングランド人がプレーしないアーセナルやイタリア人のいないインテルは、もはやイングランドやイタリアのチームとは呼べないだろう」
下部組織出身の選手がチームの主力の座につき、そこに外国からやってきた特別な才能を持った選手が加わってチームが完成する。こうした特徴は、“あのクラブ”に似てはいないだろうか。
そういえば、昨年のこと。ファンハールはバイエルンの監督に就任した直後にこんなことを口にしていた。
「私の理想とするクラブはバルセロナなんだ」
かつてバルセロナの監督を務めた指揮官の下、バイエルンのバルサ化は少しずつだが確実に進行しているようだ。