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雌雄を決するレアルとバルサ。
勝負の決め手は“監督力”にあり!!
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byGetty Images
posted2010/08/28 08:00
欧州CLの試合前に笑顔を交わすメッシとモウリーニョ。メッシはインテルに負けた借りをレアルで返せるか?
いまからちょうど一年前のことだ。
昨シーズンのリーガ開幕前、バルセロナのディアゴナル通り沿いのバルで、スペインの各メディアの記者たちと食事をする機会があった。
そこは赤ワインを飲ませるバルで、カウンターにはイベリコ豚の足が整列するようにきれいに吊るされていて、昼下がりの店内は次第に人が集まり始めていた。
あるキャリアの長いバルサ番の記者が言った。
「優勝は(レアル)マドリーだ。こいつは史上最高の2強争いになる」
昨季、レアル・マドリーはクリスティアノ・ロナウド、カカー、ベンゼマらを大胆に補強。「銀河系の再来」と人は呼んだ。
しかし多くの専門家はバルサの優勝を信じていた。数カ月前にチャンピオンズリーグで優勝し、そのサッカーは完成の域へと近づいていたからだ。彼が優勝はレアルと断言した時、他の記者は少し信じられないような表情を浮かべていたことを思い出す。
結局レアルが優勝することはなかった。しかし国内の大方の予想に反して最後までバルサと優勝を争い、レアルは96ポイントを奪った。2チームの差は3ポイント。見事に歴史的なタイトルレースだった。
バルサとレアルの直接対決の勝者がリーガを制す。
それから一年──。
開幕を控えたスペイン国内では、優勝をレアルとする人は昨季より大幅に増えている。
この2チーム、戦力的には互角だ。そこにはほとんど完全な均衡がある。
つまりポイントは直接対決のクラシコによってもたらされる勝ち点6の行方だ。現在レアルはクラシコ4連敗中。この直接対決の戦績が改善されないかぎり、レアルの優勝はない。
昨季に続き、レアルには大規模な変革が行われた。新監督にモウリーニョを招聘し、ディマリア、ケディラ、エジル、ペドロ・レオン、リカルド・カルバーリョ、カナレスらを獲得した。
ディマリアやペドロ・レオンのようなウイング的な選手が増えたこと。ピボーテに守備だけではなくゴール前まで飛びこむダイナミズムを持つケディラが加わったこと。そしてエジル、カナレスらの若さと創造性。
ウイングが強化されたことで、これまでよりもピッチを幅広く使うことができ、戦い方のオプションも増えた。どこをとっても補強された感がある。