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ファンハール監督が推し進める、
バイエルンの“バルサ化”計画。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2010/08/29 08:00
ブンデスリーガは開幕を迎えたが、8月31日の移籍期限を前にクラブ間で移籍の最終交渉が行なわれている。
ホッフェンハイムは10番をつけるカルロス・エドゥアルドをルビン・カザンに放出した。ユベントスのジエゴはまもなくヴォルフスブルクにやってくると言われており、シャルケはレアル・マドリーからファンデルファールトの獲得に動いている。さらにアルビレックス新潟の矢野貴章のフライブルクへの移籍も間近に迫っているようだ。
そんな喧騒をよそに、静観を決め込んでいるクラブがある。バイエルン・ミュンヘンだ。レンタル移籍から戻ってきた選手はいるが、今季のバイエルンが新たに獲得した選手は一人もいない。バイエルンは毎年のように補強を繰り返してきたクラブであり、昨季も移籍期限ぎりぎりにロッベンを獲得したのは記憶に新しい。実際、今シーズン前にはクラブが左サイドバックの補強に動いてると噂されたが、ファンハール監督はそれも否定した。
「左サイドバックの補強? それは私の意志に反しているよ。そもそも(昨シーズン後)バカンスに行く前に、私が獲得を希望した選手は一人もいないんだ。現状のメンバーで満足している」
ファンハールが積極的な補強をしなくても良いという根拠。
ファンハールはトップチームの人数を20人から22人で構成することを理想としており、けが人が出た場合には3部リーグに所属するバイエルンのリザーブチームなど、下部組織から選手を連れてくれば良いと考えている。
昨シーズンも左サイドバックを務めるコンテントや、ボランチ・左SB・左MFなどの複数のポジションをこなすアラバがシーズン中にトップチームに帯同していた。その甲斐もあって、コンテントは1月に、アラバは6月にトップチームと契約を結んだ。昨冬にはトップチームの人数を減らすために、数人の選手を完全移籍、レンタル移籍を含めて放出した経緯がある。実際、今シーズンの開幕前にレンタル移籍から戻ってきた選手については、現在も放出にむけて動いている。
開幕直前にはこんなこともあった。昨季までレギュラーのセンターバックだったデミチェリスがバイエルン生え抜きのバドシュトゥーバーにポジションを奪われて、移籍を志願した。昨季までのレギュラーがチームを離れたがっている状況について問われたファンハールは、こともなげに答えてみせた。
「デミチェリスがチームを離れたがっているとしても、大きな問題ではない。彼がいなくても我々には(リザーブチーム所属の)ハースがいる」
主力級の選手の移籍にも動じないのには理由がある。昨シーズンの間にはハースを含めて下部組織の選手たちを何度もトップチームの練習に呼んでおり、彼らの実力がわかっているからなのだ。