野球善哉BACK NUMBER
夏の甲子園で番狂わせの予感アリ!
優勝候補と対戦する伏兵校に注目。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/08/06 10:30
聖光学院が一皮剥けるためには「強豪校撃破」が必要。
ただ、見方を変えていくと、そこまでの実績があるがゆえに、もうひと段階上に行くための「何か」が聖光学院には必要だということでもある。指揮官は「強豪校撃破」に、それを見出している。斎藤監督は言う。
「3年前に広陵さんと3回戦で対戦させていただいた。あのとき、敗れたのですが、ウチにないものが広陵にはたくさんあって、その差を大きく感じさせられた試合でした。あれから3年間、その差を埋めるよう、チームを強化してきたつもりだし、結果はどうなるか分かりませんけど、3年前と同じような結果にはならないぞ、というプライドをもって戦えると思っています」
聖光学院が一皮を剥くチャンスがここにやって来たのだ。初戦でセンバツベスト4の広陵を破り、3回戦で当たる予定の近畿勢の強豪、履正社vs.天理の勝者も続けて撃破すれば、聖光学院の、福島県の歴史は大きく変わる。
「強い相手、凄いピッチャーのいるチームと対戦する。そういうめぐりあわせは感じています。おこがましいですけど、倒せるチャンスがあるという気もしています」
駒大苫小牧に負け、PLを破った南陽工は節目を迎える。
2連覇を狙う中京大中京と対戦することになった南陽工・山崎康浩監督は、よくぞ聞いてくれたと言わんばかりの表情で、王者との対戦に気持ちを語った。前回出場した、'06年夏、南陽工は監督就任1年目の山崎監督に率いられ、初戦で駒大苫小牧と対戦した。当時、2連覇中、エース・田中将大(楽天)を擁したあの王者にぶつかったのである。
結果は3-5の惜敗。駒大苫小牧圧勝の下馬評があった中で、抜群の呼吸のバッテリーを中心にした戦いぶりで、「あわや」の展開を見せたのだ。その南陽工が時を経て迎えた舞台で、またも前年度覇者と対戦するというのは不思議な巡り合わせではないか。指揮官の士気が上がって当然である。
「正直に言いましてね、駒大苫小牧とやったときは、スコアこそ、惜しい試合でしたけど、力の差を感じていました。勝てる要素がないなと。でも、それからは、このチームは成長してきたと思いますし、今回、こうやって王者と当たるということは、南陽工にとっても大きな節目になるんじゃないかなと思っています」
惨敗だったと感じた全国の王者との差は確実に埋まってきている。昨春のセンバツでは優勝候補の一角とも言われたPL学園を撃破し、ベスト8に入っている。当時2年生エースだった岩本輝は、心身ともに成長し、最高の時を迎えている。南陽工と言うことで、「津田(恒実)二世」がメディアの常套句になっているが、彼が津田二世かどうかはともかくとして、チームとしては、いよいよ、勝負の時なのである。