ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
男子ゴルフツアーも海外進出時代へ。
Jリーグに学ぶ、アジア戦略の要諦。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAP/AFLO
posted2013/03/30 08:02
タイランドオープンでプレー中の谷原秀人。コース上の看板にボールが当たるという想定外のアクシデントこそあったが「海外の試合では良くあることですから」と気丈に対応した。
いつもなら、ボールはきっと池を越えていたはずだった。あんなところに、看板さえなければ……。
谷原秀人が思わぬ不運に見舞われたのはこの春、東南アジアでの出来事。3月14日からバンコク近郊にある国際空港のそばで行われた、タイランドオープンでの一幕である。
2013年の日本男子ツアーは、例年よりも1カ月早く開幕を迎えた。とはいっても、これはシーズンの初戦として定着している4月の東建ホームメイトカップではない。それに先駆け、日本ツアーが環太平洋地域で展開されるツアー「ワンアジア」と協力して作られた新規大会。今週開催のインドネシアPGA選手権と並ぶ「アジアシリーズ」の名で立ち上がった一戦だ。インドネシアでは昨シーズンも同様のジョイントイベントを行ったが、今年はこの2試合の獲得賞金額が、日本での賞金ランキングに加算されることになったのが大きな変化だ。
タイでの3日目、谷原は14番までに5つのバーディを奪って上位進出のチャンスを手にしていた。ところがこの日最初のボギーを叩いた直後の16番、想定外のプレーが起こる。
バーディチャンスの拡がるパー5。2オンを狙った手応えある一打が、池へと落ちたのだ。これがただの池ポチャであればなんてことは無いのだが、彼のショットはグリーンを遮るように、飛球線上に設置されたスポンサーボードで跳ね返り、行き先を池へと変えたようなのである。
日本国内での常識が外国では通用しない。そんなことがゴルフでも起こった。
日本ツアーであれば、プレーの邪魔になりうる障害物はコースの脇に追いやられて当然。宣伝用の看板はティグラウンドや、ギャラリースタンドに掲げられる。だが、ホストツアーのワンアジアが管轄する試合は勝手が違った。
「スポンサーボードは、目立つところに」
あちらは、あちらの常識を素直に実行したまでの話。こんな相違は国や地域が違えば付き物だ。
大企業の“スポーツ離れ”で、アジア進出に舵取りを。
そして今週、インドネシアオープンでは、再び熱戦が繰り広げられている。
このシリーズの立ち上げは、昨今の日本ツアーを取り巻く厳しい環境が関わっている。
2013年、男子ツアーの国内開催の試合数は25から23に減った。女子は1試合増の36試合で合計の賞金額は31億3600万円と史上最高額になったというのだから……男子ツアーに吹く風は冷たい。
日本ゴルフツアー機構の山中博史専務理事は、各国との橋渡し役となり、大会の立ち上げ、運営に尽力した人物。開催の経緯について「日本にある代表的な企業にトーナメントを応援してもらうためには、どういう仕組みが必要なのか、となった時に、それはやはり海外とのタイアップだったんです」と説明する。