ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
男子ゴルフツアーも海外進出時代へ。
Jリーグに学ぶ、アジア戦略の要諦。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAP/AFLO
posted2013/03/30 08:02
タイランドオープンでプレー中の谷原秀人。コース上の看板にボールが当たるという想定外のアクシデントこそあったが「海外の試合では良くあることですから」と気丈に対応した。
目先の収益よりも交流によるコネクション作りを重視。
そうはいっても、Jリーグの露出が放映権料による直接的な収益につながるかは難しい。
世界最高レベルの欧州サッカーが放送される一方で、日本サッカーへの興味、需要がどれだけあるのか、という疑問があるからだ。しかしそこは「ヨーロッパの迫力ある映像はエンタテイメントとして、Jリーグの映像はその国のサッカーや子供たちの強化として。同じようなフィジカルを持った選手たちが、どう強くなるのかを参考にしてもらう」と山下氏。異なるアプローチを持ち、独自の価値を高めているという。
ポイントとなるのが育成、組織マネジメント、審判の交流といったサッカーレベル向上に関するノウハウの無償提供だ。
日本サッカーがこの20年でどう発展したのか、それは近隣諸国の目に実に魅力的に映る。既にタイ、ミャンマー、ベトナムと提携し、協力体制を築いている。
その結果、ときに各国の要人や、東南アジアの石油王から「リーグや、クラブのスポンサーがうちの国でビジネスをしたかったら、言ってきてくれ」といった声がかかることが、今では増えてきたという。
サッカーで作ったアプローチが、大規模な事業につながる。Jリーグに関心のなかった企業が『Jリーグのクラブを持つと、アジアでのビジネスツールとして役立つ』となれば、クラブの在り方も変わってくる。
アジアにおける日本ツアーの知名度向上が好循環をうむ。
昨年、タイのスポーツ新聞ではサンフレッチェ広島のリーグ優勝が、カラー面で大々的に報じられた。1月、ブルネイのビラ皇太子を表敬訪問した岸田外相はサッカー日本代表のユニフォームをプレゼントした。
日本サッカーはいまや営業ツールどころか外交ツールの一面すら持つ。人気が高まり、露出効果が拡大すれば、タイ語やマレー語の広告をスタジアムやユニフォームに踊らせることだって夢物語ではない。
もちろん、東南アジア諸国でのサッカー人気は抜群で、ゴルフの競技人口や観戦する習慣とは比にならない。だがゴルフは“富裕層”にリーチできるといった点や、企業名がそのままイベントの名前に入るなど、営業面でポジティブな要素もある。
米国女子ツアー(LPGA)では、数々の女子プロを輩出した韓国への放映権料が重要な収入源。そして日本女子ツアーにも同様の需要がある。日本のゴルフトーナメントにおいて、年間ほとんどの試合の放映権を持つのはツアー運営を取り仕切るゴルフ団体サイドではなく、主催スポンサーである。だが、このアジアシリーズについては今後の放映権の獲得について模索している最中。周辺国で積極的に露出し、一方で地道なPR活動を行う。それが国籍を問わず、日本ツアーを戦う選手のファンを増やすことになれば、好循環を生むだろう。