MLB東奔西走BACK NUMBER
日本人“助っ人”を襲う、
MLB世代交代の波。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2010/07/09 10:30
ロッキーズのヒメネス(26歳)は7月7日現在で14勝1敗、防御率2.27と、リーグ最多の勝利数を挙げるなど抜群の安定感を誇っている。日本のネット掲示板でも「凄すぎる!」と話題に
もうすぐシーズン前半戦が終わろうとしている。1995年以来メジャー取材を続けていて、今年ほど日本人選手が不遇続きだったことは記憶にない。
投手では松坂大輔と上原浩治が開幕前に故障者リスト入りしたのを皮切りに、五十嵐亮太、斎藤隆も負傷により戦線離脱を余儀なくされた。野手に至っては松井稼頭央がチームから解雇されると、岩村明憲が戦力外通告でマイナー行きし、福留孝介もここ最近先発出場機会が大幅に減少している。
また、つい最近ようやく今季初勝利を挙げた川上憲伸も先発枠を外され中継ぎに回り、松井秀喜も5月は過去に経験のない不調に陥っていた。結局ここまで無難に(あくまで大まかに捉えてだが)シーズンを過ごしたのは、イチロー、黒田博樹、高橋尚成、岡島秀樹の4人だけという状況だ。
ストラスバーグら将来有望な若手に追い出される日本人選手。
負傷は仕方がない部分はあるとしても、これだけ日本人選手たちが厳しい状況に置かれるとは想像もしていなかった。特に松井稼、岩村、福留の3選手の場合、本人たちの成績不振はもとより、控え選手の台頭や若手有望選手の抜擢という、MLB全体に広がりをみせている世代交代の波の影響をもろに受けてしまったといっていい。
事実、彼ら3人が在籍しているナ・リーグでは急速に世代交代が進行している。
ブレーブスのジェイソン・ヘイワードの鮮烈デビューに始まり、ナショナルズのスティーブン・ストラスバーグの圧倒的なメジャー初登板と、各チームが堰を切ったように将来メジャーを背負って立ちそうな若手選手たちをマイナーから昇格させた。
その2人だけでなく、カブスのスターリン・カストロ、タイラー・コルビン、パイレーツのペドロ・アルバレス、ネイル・ウォーカー、ジャイアンツのバスター・ポージー等々。シーズン前に将来を嘱望されていたドラフト上位指名選手たちの“デビュー・ラッシュ”が続いたのだ。
世代交代の波は投打の成績にも如実に表れている。
両リーグの投打の部門別成績を見ても、随分と様変わりしているのは明らかだ。ナ・リーグの投手ではロッキーズのウバルド・ヒメネス(写真)の驚異的な成績ばかりが目立つが、それ以外でもマーリンズのジョシュ・ジョンソンやカージナルスのハイメ・ガルシアなど若手投手を含む20代選手たちが上位を独占している(ただし、クローザーはベテラン投手たちが上位に踏みとどまっている)。
打者に関してもまったく同傾向だ。毎年のように上位に名を連ねていたアルバート・プホルスやライアン・ハワードに代わり、故障で戦線離脱するまでリーグ三冠王だったドジャースのアンドレ・イシアー、現在本塁打部門1位のレッズのジョーイ・ボットなど、やはり20代選手たちの台頭が著しい。さらにア・リーグについても、投打ともに成績上位者が30代の大物選手たちから20代選手たちに移行しているのが顕著だ。