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必要なのはゴールか、バランスか!?
迷走脱した岡崎慎司の大きな前進。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph bypicture alliance/AFLO
posted2013/03/14 10:30
ラバディア監督の一貫しない起用法に振り回されながらも守備に攻撃に奮闘を続ける岡崎。しかし、後半開始時からの出場となった3月10日のハンブルガーSV戦ではチームは完封負けして14位に転落。
岡崎慎司の抱えていた迷いは、ようやく晴れるかもしれない。
そもそも、岡崎は大きな期待を受けて2013年を迎えていた。
昨年の11月22日、ヨーロッパリーグのステアウア戦で、ドイツに渡ってから初めてとなる1試合2ゴールを記録。さらに12月1日、降格圏に沈むフュルトとの試合では決勝ゴールを決めるなど、昨年末には立て続けにゴールに絡む活躍を見せていたためだ。
ウインターブレイクを挟んだ後、年明け最初のリーグ戦となるヴォルフスブルク戦では、不動の1トップであるイビセビッチが出場停止だったため、早い段階で岡崎が1トップに指名されていた。この一戦を前に、相手チームのヘッキンク監督から「シュツットガルトのオカザキに警戒しないといけない」と言われたほどだった。
だが、2013年の幕が開けてみると、岡崎は“大きな期待”に応えられない日々が続いていた。
ドイツに来てから初めて1トップを務めたヴォルフスブルク戦では、フル出場を果たしたものの決定機でシュートを外すなど、満足のいくパフォーマンスは見せられなかった。
「(相手チームの中心である)ジエゴは決定機を決めて、自分は外した。もっと能力あげていかないとなと思いますね」と試合後の岡崎は悔しさをあらわにした。
リーグ戦では翌週のバイエルン戦にも先発したものの、途中交代。それ以降、リーグ戦で先発する機会はなし。ヨーロッパリーグでは、先発する機会は与えられても、フル出場を果たすことはないまま2月も終盤を迎えていた。
相反する思いを抱えて迷いながらプレーをしていた岡崎。
そんな中で迎えた2月27日のドイツ杯ボーフム戦では、2トップの一角として先発したが、なんと前半終了時点で交代を命じられてしまう。実際、パスを受けてもそのあとのプレーに移るまでに迷ってしまい、パスミスをしたり、相手にボールを奪われてしまうシーンが前半から目立っていた。ミスからさらにプレーに迷いが生まれる悪循環。これにはさすがの岡崎も肩を落とした。
「正直、45分での交代はショックです」
不甲斐ないプレーの原因はどこにあったのか? まず、チームの迷走という状況がある。格下との対戦となったドイツ杯やヨーロッパリーグを別とすれば、リーグ戦では2月末までの6試合では1勝1分4敗。チームとして目指すべきサッカーも見えてこず、それぞれの選手がバラバラに動くだけといった試合が多い。
だが、最大の原因は、ラバディア監督の顔色をうかがいながらプレーしていた岡崎自身にあった。チームがバラバラになっているためにバランスをとった方がいいと思いながら、その一方では、試合に使ってもらうためにゴールを決めて監督にアピールしないといけないと考えてしまう。2つの思いは相反するものだったため、プレーを選択する前には迷いが生まれてしまった。思い切りのよいプレーなど望むべくもなかった。