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必要なのはゴールか、バランスか!?
迷走脱した岡崎慎司の大きな前進。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph bypicture alliance/AFLO
posted2013/03/14 10:30
ラバディア監督の一貫しない起用法に振り回されながらも守備に攻撃に奮闘を続ける岡崎。しかし、後半開始時からの出場となった3月10日のハンブルガーSV戦ではチームは完封負けして14位に転落。
再認識した「自分が生き残っていくためのポイント」。
続く3月2日、リーグのレバークーゼン戦ではついに出場機会を得られず。ピッチの外で90分間を過ごした。
今年になってから最低のパフォーマンスを見せた試合と、出場機会の得られなかった試合は、岡崎に考えるきっかけを与えた。
タイトなスケジュールの中で行なわれた3月7日のヨーロッパリーグのラツィオ戦では右サイドのMFとしてスターティングメンバーに名を連ねた。サイドで起用されるのは今年に入ってからは初めて。この試合、チームとしてはほとんど見せ場を作れずに0-2で敗れたが、岡崎は3度の決定機に絡んだ。1週間前に行なわれたボーフム戦とは別人のようだった。
変化の理由を岡崎はこう語る。
「背伸びしてもダメで、やれることをやった上でどれだけ引き出しを増やしていくか。結局、勝つためにチームに足りないことを補えるっていうのが自分が生き残っていくためのポイントだと思います」
ラバディア監督の言葉にこめられた“メッセージ”とは?
続くリーグのハンブルガーSV戦では、後半開始時からの出場。チームとしては散々なパフォーマンスで、セットプレー以外からはチャンスを作れなかったが、それでも岡崎は2度の決定機に絡んで、存在感を放った。試合後の口ぶりにも、力が戻ってきた。
「結局、チームに最も欠けているのはバランスだと思う。勝つためにはそこを自分が補ったうえで、得点を狙うというのが今やるべきこと。監督に『こいつがいたら落ち着くな』と思わせて、その上で点を取ったらたぶん一番信頼される」
昨年末、岡崎はラバディア監督から繰り返し言われていた。
「お前の場合、あとはゴールさえ決めればいいんだ」
だからこそ、昨年末に立て続けにゴールを決めると、評価を高めていった。
それと同時に、この監督からの言葉は、“バランスをとるプレーをした上で”ゴールを決めれば、チームで絶対的な存在になれるというメッセージでもあった。
確かにラバディア監督の岡崎の起用法には一貫性がない。だが、それは選手が口をはさむことではない。GMなり、ファンが判断することだ。
今、岡崎の目の前にある道はまっすぐだ。チームのバランスをとったうえでゴールを決める。そのことが評価を高める。まだ何かを得たわけではないが、それを理解できたことが、岡崎にとっての大きな前進なのだ。