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新ローマ法王をマラドーナも祝福!
“神の手”再来に熱狂のアルゼンチン。
text by
藤坂ガルシア千鶴Chizuru de Garcia
photograph byChizuru de Garcia
posted2013/03/15 13:50
「Olé」紙を飾った新法王フランシスコ1世。一面の見出しは「LA OTRA MANO DE DIOS」(もうひとつの神の手)。中面では「PAPA ES CUERVO」(法王はカラス=サン・ロレンソの愛称」と見出しを打っている。
3月13日、アルゼンチン人のローマ法王が誕生した。
ブエノスアイレス市の大司教として市民から愛されてきたホルへ・ベルゴグリオが、白い法王の衣装をまとってバチカンのサン・ピエトロ大聖堂のバルコニーに姿を見せた瞬間、アルゼンチン国内は歓喜に包まれた。
カトリック教国において、法王の存在は偉大である。法王がどの国の出身であるかなどと信者たちが意識することはほとんどなく、国籍を超えて敬愛されるものだ。だがやはり、常に世界から注目されたいと切望しているアルゼンチン国民にとって、今回の法王誕生ほど誇らしいニュースはなかった。この国で外国人として生活している私でも、ベルゴグリオの名前が呼ばれたとき、感動のあまり鳥肌が立つのを覚えたほどだ。
「我々に法王あり」ならぬ「ここにメッシあり」!?
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面白かったのは、ちょうどその前日、アルゼンチンのメディアがメッシを「サッカー界の法王」に例えていたことだった。チャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦セカンドレグで、バルセロナがメッシの見事な2ゴールを含む4ゴールを見舞ってミランを粉砕したあと、元・インテルのDFマテラッツィがツイッターで「Habemus Messi」(アベムス・メッシ)と呟いていたからだ。
これはラテン語の「Habemus Papam」(アベムス・パパム)を捩ったもので、コンクラーベによって法王(パパム)が選出され、枢機卿が、バチカンの広場に集まった信者たちに法王決定を告げる際の決まり文句である。直訳すると「我々に法王あり」となり、マテラッツィは宿敵ミランを敗退に追いやったメッシを讃えるべく、「ここにメッシあり」という意味を込めて使ったのだ。
アルゼンチンサッカーの英雄たちに“侵略”されたバチカンの聖域。
アルゼンチンの有力紙の記者も「バチカンでコンクラーベが続いている間、サッカー界での法王はメッシに決まった」とツイートし、ニュース番組ではバルセロナの勝利を伝える映像に「Habemus Messi」というテロップが添えられていた。
だがその翌日、実際にアルゼンチン人の法王が誕生するや、バチカンの気高くアンタッチャブルな聖域が、アルゼンチンサッカーの英雄たちによってさらに“侵略”されることとなった。