詳説日本野球研究BACK NUMBER
データから見る侍ジャパンの修正点。
キーワードは“三塁”と“盗塁”!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNaoya Sanuki
posted2013/03/05 10:40
ブラジル、中国の2連戦を終えた時点で、ほぼ内川聖一と並ぶ打撃成績を記録している松田。重要な三塁守備面でも活躍が期待される。
WBC(ワールドベースボールクラシック)がいよいよスタートした。連続優勝の原動力になったイチロー(ヤンキース)、ダルビッシュ有(レンジャーズ)たちメジャーリーガーが参加しないことで、アメリカのジョー・トーリ代表監督などは今回の日本代表を“ハーフサイズ”と表現し、「前回大会の半分の戦力」と酷評しているとも言われる。
第1ラウンド初戦のブラジル戦は酷評を裏づけるような戦いぶりでじりじりした。見ていて歯がゆかったのは無造作にボールを打ち上げる選手が多かったこと。とくにゲーム序盤に多く、4回までの12アウト中9アウトはフライアウトによるものだった。
日本のお家芸である機動力を見せる機会は当然少なく、打者走者の全力疾走の基準タイム「4.3秒未満」を記録したのはわずか3人(3回)。選手が全力疾走しなかったというのではない。全力疾走するような打球が少なかったのである。
フライアウトを選手別で見ていこう。
坂本勇人……ブラジル戦3、中国戦2
角中勝也……ブラジル戦1
松井稼頭央…ブラジル戦0、中国戦0
内川聖一……ブラジル戦0、中国戦2
糸井嘉男……ブラジル戦2、中国戦0
稲葉篤紀……ブラジル戦2、中国戦1
井端弘和……ブラジル戦0
長野久義……ブラジル戦2、中国戦1
鳥谷敬 ……ブラジル戦1、中国戦0
相川亮二……ブラジル戦1
阿部慎之助…ブラジル戦0、中国戦1
松田宣浩……ブラジル戦1、中国戦1
中田翔 …… 中国戦1
低打率の坂本(打率.125)、稲葉(安打0)、長野(打率.167)がフライアウトを多く打っているのが目立つ。タイムリーを打っている内川、糸井のフライアウトに注目すると、内川の中国戦で記録した6回裏のフライアウトはヒット性の遊撃ライナー、また糸井がブラジル戦で記録した9回表のフライアウトは一塁線を破るかのような一塁ライナーである。それに対して坂本、稲葉、長野のフライアウトには明日につながっていく“何か”が感じられなかった。不調の選手はフライアウトが多い、といえるようだ。
フライアウト13を記録したブラジル戦にくらべて、中国戦はフライアウトが9に減った。これは4回全力疾走するチャンスが増えたということで、言い換えれば日本チームの持ち味が4回分増えるということである。5回裏にその成果が出た。
先頭の松田が放った三塁へのゴロは何の変哲もない打球で、三塁手の安旭も普通に捕って普通に投げたが間一髪セーフになった。
私のストップウォッチが表示したタイムは4.17秒。全力疾走は4.2秒未満というのが私の基準なので松田の脚力がもたらした内野安打と言っていい。
ここから打者9人を送り込む波状攻撃で4点を奪い、試合を決めた。