WBC 侍ジャパンの道BACK NUMBER
最後のワンピースは中田翔!?
不振の侍打線の救世主となるか。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2013/03/04 12:05
「雲の上の存在の立浪さんがずっと見てくれてる。結果を残したかったので」と語る中田と、「中田はまだまだ日によって打ち方が違うけど、試合は結果が全てだからね」とコメントした立浪打撃コーチ。
バシッと両手を叩くと、ベンチに向かって派手なガッツポーズを決めた。
中田翔だ。
2回2死二塁。中国先発のラ・カの内角に食い込む132キロのツーシームに自然と身体が反応した。左脇を締めて、ひじを畳んだコンパクトなスイング。打球は三遊間を破る先制タイムリーとなった。
ブラジル戦の薄氷の勝利から一夜明けた1次ラウンド第2戦の中国戦。侍ジャパンはこの中田の一打をきっかけに、ようやく日本らしい試合運びで中国を撃破。2次ラウンド進出をほぼ確実なものとした。
「(後ろに)凄い打者がいるので、つなごうと思ってコンパクトに打ちました。高い球ではあったけど、しっかりタメを作って打てました」
先制タイムリーの中田は言う。
中田が取り組んだ突貫工事のフォーム改造が、見事に実を結んだ。
代表合宿に入ってから立浪和義打撃コーチとともに、突貫工事のフォーム改造に着手した。どうしてもボールを迎えにいってしまうため大きく足を上げてタイミングをとる打ち方から、摺り足打法に変えた。グリップをトップの位置まで引いたときにステップした左足が着地する。「割れ」、いわゆる弓を引いた状態を作るための工夫だった。
そうして2月20日の代表選考では、最後まで巨人の村田修一と長距離砲としての座を争った末に生き残ってきた。
首脳陣の期待も大きく、壮行・強化試合はすべて先発で出場したが、15打数2安打の打率1割3分3厘と結果を残すことができなかった。しかも最後の巨人戦では左ひざに自打球を当てるアクシデントもあり、2日のブラジル戦は先発から外れたどころか、出番すらも与えられなかった。
そうして巡ってきた2試合目の“開幕”だったのだ
「きょうは思った以上に緊張はあったけど、ヒットが出てホッとしています。試合に出られなかったのは自分の実力。本当に悔しかった」
そうした思いをぶつけたのが、この先制タイムリーで、思わず派手なガッツポーズが飛び出したのも頷けるものだった。