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“一芸”と“街クラブ”が生んだ躍進!
群雄割拠の高校サッカー選手権。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byKyodo News
posted2013/01/11 11:15
準々決勝の作陽(岡山)戦、先制ゴールを決め、喜びを表現する桐光学園のキャプテン大田隼輔(写真左)。中村俊輔(横浜FM)を擁した16年前の準優勝を超え、チームに悲願の初優勝をもたらすことができるのか。
50m走5秒8の快足を飛ばす京都橘の2年生FW小屋松。
桐光学園でキャプテンを務めるサイドバック、大田隼輔も豊富な運動量だけではなく“強肩”にも目を見張るものがある。準々決勝・作陽(岡山)戦では、前半34分には先制弾、そして後半アディショナルタイムには、大田が投じたロングスローから劇的な決勝ゴールが生まれた。
星稜・河崎護監督も「チームの武器」と認めるほど強力な松岡や、桐光・大田のロングスローが相手の脅威になっていることは確か。そして2人以外にも、自分の特徴を生かしてチームに還元している選手たちは多い。
アタッカーで挙げると、準々決勝終了時点で得点ランクトップタイの4ゴールを挙げている京都橘の2年生FW小屋松知哉だ。50m走を5秒8で駆け抜けるストライカーは、そのスピードを最大限に生かして相手最終ラインの裏を狙い続け、初戦・正智深谷(埼玉)戦から3回戦・丸岡(福井)戦まで3戦連続ゴール、計4得点を叩き出して得点ランクトップに立っている。
前述した桐光も大田だけではない。数的不利の状況を楽しむかのような仕掛けが光るMF橋本裕貴は、左利きのドリブラーという希少価値の高い存在だ。
中学の部活でもJの下部組織でもない、「街クラブ出身者」の存在。
彼らに共通するのは、“負けたら終わり”の戦いをサバイバルするために、1点に直結するプレーを磨き上げている部分だ。参加校のレベルが平準化しているからこそ、彼らのようなタイプが勝利をもぎとるエッセンスとなるのだろう。
そして、準決勝以降の戦いを楽しむポイントとしてもう一つ興味深いのが、選手たちの中学校時代の経歴である。
彼らの中学校時代の所属先には主に3パターンある。それは(1)中学校から、もしくは中高一貫での内部進学のパターン、(2)Jクラブのジュニアユースに所属しながらユースへと昇格できずに高校へ進学するパターン、(3)中学校の部活やJの下部組織以外の「街クラブ」と呼ばれるチームから高校に進むパターンだ。
1つ目はごく一般的な「部活」の道筋で、2つ目のルートは日産FCジュニアユース(横浜FMジュニアユース)→桐光学園の中村俊輔、G大阪ジュニアユース→星稜へと進んだ本田圭佑の2人が代表的だ。
今回、その2パターン以上に注目したいのは、3つ目の「街クラブ出身者」の存在である。準決勝に進出した4校に限らず、高校にほど近い街クラブ出身選手が在籍するチームは多い。先に挙げた松岡(ヘミニス金沢FC)、大田、橋本(ともに町田JFC)、小屋松(宇治FC)の4選手もこれに該当する。