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“一芸”と“街クラブ”が生んだ躍進!
群雄割拠の高校サッカー選手権。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byKyodo News
posted2013/01/11 11:15
準々決勝の作陽(岡山)戦、先制ゴールを決め、喜びを表現する桐光学園のキャプテン大田隼輔(写真左)。中村俊輔(横浜FM)を擁した16年前の準優勝を超え、チームに悲願の初優勝をもたらすことができるのか。
ドリブルに特化するなど特徴ある練習を行なう街クラブ。
街クラブと言えば、香川真司(マンチェスターU)が所属していたFCみやぎバルセロナをはじめとして、選手の輩出源となっている。
第84回大会、野洲のセンセーショナルな全国制覇の原動力となった乾貴士(フランクフルト)はセゾンFC出身、そして第86回で7得点を叩き出して得点王となり、全国優勝を果たした流通経済大柏(千葉)の大前元紀(清水→デュッセルドルフ)は、大田や橋本と同じ町田JFC出身だ。彼らの活躍は、日本サッカー全体の育成システムが多様化している象徴ともいえる。
ドリブルを徹底的に鍛えるセゾンFCの練習スタイルに代表されるように、街クラブごとに鍛えるプレーが特徴的であることが多いのも“一芸”を生み出す土壌と捉えることもできよう。
育成システムの多様化という点では、高卒後のキャリアで言えば大学進学も、近年、再び大きな流れとなりつつある。青森山田のサイドバック・室屋成はJクラブからのオファーを断り、同ポジションの大先輩・長友佑都(インテル)に憧れて明大に進学する予定だ。室屋以外にも、ベスト4に残った4校からも、大学を経て数年後に再び注目される選手が現れる可能性は、十分にある。
1月12日(土)の準決勝では鵬翔が星稜と、京都橘が桐光学園と対戦し、それぞれの勝者が14日(月)、決勝の舞台で激突する。
様々なキャリアを歩んでたどり着いた聖地・国立で、それぞれが次の舞台に向けて現時点での力を発揮しきれるか。トーナメント制のドラマチックな側面にスポットが当たりがちな選手権だが、中学校、Jクラブの下部組織、街クラブ出身者、それぞれの選手の特徴を見比べてみるのも面白い。