MLB東奔西走BACK NUMBER
MLBでの評価基準で考察すると……。
引退の松井秀喜、殿堂入りはあるか?
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byAFLO
posted2013/01/11 10:31
2012年12月27日、引退を表明した松井秀喜。巨人からメジャーへ移籍し、ヤンキース、エンゼルス、アスレチックス、レイズで計10年間プレー。メジャー通算、1236試合、1253安打、打率2割8分2厘、175本塁打、760打点という成績を残した。写真はワールドシリーズMVPを受賞した時のもの。
野球データサイトが示す、殿堂入りに必要な条件とは?
殿堂入りの指標として面白いデータがある。メディアはもとより、チーム広報もフル活用している『Baseball-Reference.com』(http://www.baseball-reference.com/)というメジャー関連のデータを集積したサイトである。このサイトでは各選手を紹介するページで、「Hall of Fame Monitor」と「Hall of Fame Standards」という殿堂入りに関するふたつの独自基準の数値を公表している。
「Hall of Fame Monitor」という基準で100ポイントを超えると、殿堂入りが果たせると見なされている。もうひとつの「Hall of Fame Standards」という基準では、おおよそ50ポイント以上獲得すれば殿堂入りができるとされている。共に、それぞれ別の角度から各選手の成績を計算してポイント化した基準となっている。
野茂の場合、前者が24ポイントで、後者が14ポイントしかない。つまり、メジャーだけの成績ではどう太刀打ちしても殿堂入りの可能性を考慮することすら難しい存在になってしまうのだ。
殿堂入りでは、選手の人気よりも米国での成績を重視する。
だがその一方で、野茂はメジャー通算4人目の両リーグそれぞれでノーヒットノーランを達成した投手でもある。しかも、野茂以外の3投手はいずれも殿堂入りを果たしている。この事実を記者達に投げてみても、彼らの反応が変わることはなかった。その理由をある1人の記者はこう説明していた。
「殿堂の正式名称は『The National Baseball Hall of Fame and Museum』なんだ。つまり“National”という言葉がついている限り、その判断材料は米国内に限られてくる。そうなってくると、やはり野茂の成績では不十分だ。
もちろん野茂がメジャー球界にもたらしたインパクトは否定できない。しかしそれはフェルナンド・バレンズエラにも同じことがいえる。そんな彼でも殿堂入りできていない」
その記者が例示しているバレンズエラとは、'80年代当時はまだ多くはなかったメキシコ人のメジャー選手。ドジャースで先発投手として活躍し、1981年には“フェルナンドマニア”と呼ばれるファンが出るなど、一大ブームを巻き起こした選手だ。1995年に“ノモマニア”と呼ばれ、トルネード旋風を起こした野茂が常に比較されてきた選手でもある。
メジャー在籍17年で173勝し、オールスター戦6度出場という実績があるバレンズエラでさえも、上記サイトのデータでは66ポイントと25ポイント止まり。
実際の殿堂入りの投票でも2年目の投票で全体の3.8%しか獲得できず、早々に選考対象から外れてしまっている。この事実を突きつけられては、さすがに野茂の殿堂入りについて、結果は明らかだった。