MLB東奔西走BACK NUMBER
MLBでの評価基準で考察すると……。
引退の松井秀喜、殿堂入りはあるか?
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byAFLO
posted2013/01/11 10:31
2012年12月27日、引退を表明した松井秀喜。巨人からメジャーへ移籍し、ヤンキース、エンゼルス、アスレチックス、レイズで計10年間プレー。メジャー通算、1236試合、1253安打、打率2割8分2厘、175本塁打、760打点という成績を残した。写真はワールドシリーズMVPを受賞した時のもの。
2012年も残りわずかとなった12月27日、レイズから戦力外通告されてからずっと沈黙を守ってきた松井秀喜選手が、現役引退(本人は“引退”という言葉を使わずに“区切り”と表現している)を表明した。
ニューヨークで行なわれた会見は日本に生中継されたばかりか、会見直後に古巣のヤンキースがツイッターで関連コメントをツイートするなど、年末年始でホリデイ気分一杯の日米両国に衝撃的なニュースとして取り上げられた。
時を合わせるように高橋尚成投手がカブスとのマイナー契約を結び、斎藤隆投手が8年ぶりの日本球界復帰となる楽天入りを発表。このオフで補強プランの優先順位が低いと考えられる3人が、年越しを待つことなく三者三様の道を選択する結果となった。
松井の場合、本人さえ了解すれば斎藤同様に日本球界復帰の道はあったはずだ。だが、会見上で「僕のいいプレーを期待している方々にその姿を見せられるかは非常に疑問だった」と話しているように、日本球界を背負ってきた松井ならではのスーパースターの美学として、現状での日本球界復帰は考えられなかったのだろう。
さらに松井の引退表明に呼応して、彼のメジャー殿堂入りの可能性を検証する米メディアが登場したことが日本でも報じられ、人々の関心を集めることになった。
報じられているように、松井は殿堂入りの選考対象であるメジャー在籍10年以上をクリアしており、ヤンキース時代にワールドシリーズMVPを獲得するなど、功績を残したのも間違いない。
日米通算200勝の野茂英雄へ下された、地元記者の評価。
しかし、殿堂入りという点に関しては、そのハードルの高さは計り知れないものがある。メジャーの取材を通して、かつて殿堂入りの難しさを痛感した出来事があった。
それは、2005年のことだ。
当時筆者は日米通算200勝にあと1勝と迫った野茂英雄投手の取材に携わっていた。
5月31日の敵地で行なわれたアスレチックス戦。1995年にドジャースが野茂を獲得した時のオーナーだったピーター・オマリー氏(現パドレス=オーナー)も現地に駆けつけ、日本人メディアに囲まれながら「歴史的瞬間が待ち遠しい。今度皆さんに会うのはヒデオが殿堂入りセレモニーに参加するクーパーズタウンになりますね」と盛り上げてくれた。
しかし、それとは正反対に冷め切った反応をしていたのが地元記者の面々だった。
実はその当時、野茂の記録達成の関連取材として地元記者たちに野茂の功績と彼の殿堂入りの可能性について尋ね回っていた。というのも、殿堂入りの投票権を持つのはBBWAA(全米野球記者協会)の会員である記者達だからだ。だが、10人以上の記者に話を聞いたものの、皆一様に野茂の殿堂入りには否定的だった。
理由は至って簡単。我々が野茂の実績を日米通算で論じるのとは違い、あくまでメジャーだけの成績しか判断材料にされないからだ。