フェアウェイの舞台裏BACK NUMBER
揺らぎつつある賞金王の価値。
今、ゴルファーが狙うタイトルとは?
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO
posted2012/11/09 10:30
ミズノクラシック最終日に、10バーディ、2ボギーの64、通算11アンダーで逆転優勝を果たしたステーシー・ルイスは、試合後「信じられない気持です」と語った。
宮里藍が一度だけ賞金女王になったのをご存じだろうか。
それは日本でも米国でもない。昨年の欧州女子ツアーである。
とはいえ、2011年の宮里は欧州ツアーに2試合しか出場していない。米欧共催のエビアン・マスターズと全英女子オープン。しかも全英では予選落ちしているから、賞金を稼いだのは優勝したエビアンだけだった。
この大会の賞金が欧州ツアーの他の試合に比べて格段に高額で、しかも同ツアーには年間の出場義務試合数などの縛りもなかったことで、なんとも奇妙な賞金女王奪取となったのである。
「複雑な気分だけど、どんなツアーでも賞金女王になったことがないのでうれしい」
欧州ツアーを主戦場にしていた選手たちは当然このシステムにブーイング。おそらく欧州ツアーで戦っている意識などなかったであろう当人は、申し訳なさそうなコメントを出すしかなかったのである。
いやはや、こうなると賞金女王の価値というのが分からなくなってくる。
賞金女王より、プレーヤー・オブ・ザ・イヤーを重視する選手も。
11月4日まで三重県の近鉄賢島カンツリークラブで行われていた日米女子ツアー共催のミズノクラシックでは、ステーシー・ルイス(米国)が最終日に7打差を逆転して今季4勝目を挙げた。ルイスが一番意識していたタイトルも賞金女王ではなかった。
「今季の自分のゴールはプレーヤー・オブ・ザ・イヤー(以下POY)を獲得することだった。賞金女王争いはシーズン中盤でパク・インビ(朴仁妃)がかなりリードをしてしまったこともあるし、私にとってはPOYの方が魅力的だった。賞金額だけじゃなくて、それ以外の側面も評価してもらえるから」
POYは各大会の1位から10位までに与えられるポイントの合計得点によって争われるシステムだ。1位が30点、2位が12点、3位が9点といった具合で、メジャー4大会は倍付けになる。
米国人選手は長くこのタイトルから遠ざかっており、POYは'94年ベス・ダニエル、ついでに言うと賞金女王は'93年ベッツィー・キングまでさかのぼらなければならない。
ルイスはこの偉大な先輩プロたちからも激励を受けているのだという。
「彼女たちも応援してくれていて、(タイトルを取った)最後のアメリカ人と言われるのにもう疲れたから、あなたが頑張ってちょうだいと言われていたの」