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ベテランと韓国人選手がなぜ強い?
恵まれたゴルフ環境が生む逆説。 

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雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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photograph byKyodo News

posted2012/11/08 10:30

ベテランと韓国人選手がなぜ強い?恵まれたゴルフ環境が生む逆説。<Number Web> photograph by Kyodo News

7月のセガサミーカップ。日韓通じてのプロ初優勝を果たしたイ・キョンフン(右)と2位のキム・ヒョンソン(左)が、長嶋茂雄・大会名誉会長を挟んで記念撮影。

 日本ツアーは韓国人選手にとって踏み台でしかないのだろうか。

 今季最終戦の日本シリーズJTカップは有力選手の何人かが欠場する見込みである。なぜなら今年の米ツアー予選会は制度変更を前にしたラストチャンス。その機会を逃すまいとする韓国人選手にとって、最終予選会と日程の重なる日本シリーズは欠場せざるを得ないのだ。

 韓国から日本を経由して米ツアーを目指す――K・J・チョイやY・E・ヤンに始まり、最近では昨年の賞金王に輝いたベ・サンムン(裵相文)が辿った道だ。今年はキム・キョンテ(金庚泰)、キム・ヒョンソン(金亨成)、イ・キョンフン(李京勲)、I・J・ジャン、さらにドンファン(李東桓)、J・チョイ、J・B・パクもこれに続こうとしている。彼らにも親しみを覚える日本のファンからすれば残念な思いがあるだろうし、忸怩たる思いを抱く人もいるだろう。

 しかし、彼らは踏み台を越えるように軽々と日本ツアーを飛び越えていくわけでは決してないのだ。そこには長い階段を上っていくような一歩一歩の歩みがある。

キム・キョンテの体のケアは、出張中の会社員と同レベルだった。

 石川遼や藤田寛之らと賞金王争いを繰り広げていた2010年、キム・キョンテには、ライバルたちが当たり前のように抱えている帯同トレーナーがいなかった。神戸に行きつけのタイマッサージの店があり「マッサージに行くと次の日のインパクトの音が違うよ」と無邪気に喜んでいたものの、それとて施術の内容そのものは一般の人が受けるものとなんら変わりはなかった。

 シーズン終盤に中国に遠征した際には、連戦続きでさすがに疲れがたまっていたのかホテルでマッサージを頼んだ。体をほぐしてもらったのはこれが2カ月ぶりのこと。その2カ月前も、しがないビジネスホテルでマッサージを呼んだだけだったというのだから恐れ入る。「足や腰も疲れがたまってちょっと痛かった。でもマッサージを受けたから今は大丈夫ネ」とうれしそうに話すキム・キョンテのことを、石川は「何はともあれ相当強い体なんだなと思いました」となかばあきれていたものだ。

 体が資本のアスリートでありながら、もっとも大事な商売道具のケアは出張中のビジネスマンと同レベル。韓国では「スポーツマッサージを受けるとスイングが崩れるから嫌だ」という選手がいるほど、体のメンテナンスには無頓着なのだという。いくら頑健に見える肉体でも、これでは安定したパフォーマンスを維持していくのは難しい。

 翌年から頻繁に海外遠征もするようになったキム・キョンテは、ハードな日程を克服するために信頼できる日本人のトレーナーを雇うようになった。他の日本人選手を見習うように意識改革し、コンディションの維持に努めるようになったのである。

【次ページ】 キム・キョンテらが、藤田寛之や片山晋呉から受けた影響。

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